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北朝鮮

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2019年3月31日

最近の朝鮮半島情勢と日本

(これは、27日「まぐまぐ」社から発行したメルマガ「文明の万華鏡」の一部です)

ハノイでの米朝首脳会談の「決裂」で、北朝鮮の出方がふらふらしているように見えます。独裁国特有の、「首脳レベルの直談判で決めてやろう」という傲りが、トランプによるちゃぶ台返しをもろに食らってしまった原因で、失敗の全責任は金正恩が負います。復路は北京で列車を下りて習近平と会談することもなく(と言うか、会談の要望を受けてもらえなかったようです)、急いで逃げ帰った感じがあります。その後平壌から発せられるシグナルは方向が定まらず、外務次官が「金正恩委員長は近く、米国との協議を巡る自身の立場について公式に発表する」と言っても何も起きなかったり、内部の意見が分裂している印象を受けます。

そうした中、講談社の現代ビジネス掲載の近藤大介氏記事https://gendai.ismedia.jp/articles/-/60261?page=3によれば、マレーシアで暗殺された金正男の長男キム・ハンソル氏に近いと見られる「自由朝鮮」なる海外の団体が3月1日、実質的に亡命政府の樹立を宣言しています。https://gendai.ismedia.jp/articles/-/60261?page=3日本では、米朝関係が挫折した今は、日本の出番だとする見方がありますが、前述のように北朝鮮内部がまとまっていないと、しっかりした話しにはなりにくいでしょう。

なお、日韓関係は徴用工の問題等をめぐって、悪感情の盛り上がりが見られます。その中で日本では、「すべては文在寅大統領が裏から糸を引いている」、あるいは「文大統領は日本を軽視している」等の意見が聞こえますが、これはメディアが彼の発言の全容を報じることなく、「文大統領は反日」という一般の誤解に油を注ぐような部分だけを抜き出して報じることによっても助長されています。私は韓国が心からの友好国になるとは思っていませんが(若い世代はそうなるかもしれませんが)、韓国を不要に敵に回すのは日本の利益にならないと思います。

例えば1日、文大統領は三・一記念式典演説で、日本による当時の残虐行為を具体的に列挙、「親日残滓」の清算を呼びかけました。しかし近藤大介氏が発表している全文翻訳によると、文大統領は続けて「過去の傷口をほじくり分裂を起こしたり、隣の国との外交において葛藤の要因を作ろうということではありません。すべては望ましくないことです。親日の残滓の清算も外交も、未来志向的にしていかねばなりません」と述べています。

そして日本が当時、独立運動家にも「アカ」というレッテルを貼って弾圧したことが、今日にも北朝鮮との友情を呼びかける者に貼られている、という趣旨を述べます。つまり「親日の残滓」とは彼にとって、北朝鮮との友好を呼びかける自分、そして自分の仲間を北朝鮮の回し者呼ばわりする保守勢力のことなのでしょう。

演説の最後の方で、文大統領は対ASEAN外交の後、対日外交についてかなり長く述べています。それは、「韓半島の平和のため、日本との協力も強化する。・・・果敢に過去の過ちをただし、真の理解と共感を基軸として、良好な関係・・・」、「歴史を鑑として、韓国と日本がしっかりと手を握る時、平和の時代がわれわれのそばにやって来ることでしょう。力を合わせ被害者たちの苦痛を実質的に治癒する時、韓国と日本は心が通じる真の友人となれるでしょう」というものです。

徴用工の問題等についてはぴしっと対応していく必要があります。文大統領が何を言っても、次の日には軍や裁判所や諸省庁が日本の神経を逆なでするようなことをするからです。しかし一連の動きはすべて文大統領、韓国政権が意図的にしかけてきていることだと思い込んで、文大統領及び全韓国を敵に回すのは、日本外交の負担を徒に増やすもので、避けたいと思います。

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