コロナワクチンと東京オリンピック
(2月24日にメルマガ「文明の万華鏡」第106号を発行したのですが、この文章はその冒頭部分です)
はじめに
今月号、書こうとして何か気が浮かないのですが、それはやはりいろいろの要因から、世界での日本の地位がどんどん下がっているように見えること(と言うか、日本が「見えなく」なっている)、そして21世紀の今になってもあまりに多くのことのウラ、真実がわかっていないまま、時が過ぎて行っていることに原因があるのでしょう。
例えばコロナ・ワクチン、前から思っていたのですが、どうして自分で作れないのか、作らないのか。日本の製薬会社は世界ではマイナーですし(あれだけの医療費を使えるのに、欧米の企業に薬品市場の7割を取られている)、ワクチン開発に投資しても、継続して何年も儲けられる代物でもなし、しかももし厚労省から承認を得られなかったら目も当てられない――そういった事情なのかと勘繰っていたら、やはりその通りであったようです。最近の報道によりますと、ワクチン開発・生産のための政府補助金が1200億円、今回補正予算に乗ってやっと、日本の製薬会社はワクチン生産に取り掛かるようです。
次にわからないのは、外国ワクチンの輸入について。誰の責任で実際誰がいつどこで誰と交渉し、どういう契約を結んだのか、全然わからない。外国との交渉に不慣れな官庁の役人が、外部のどこかに交渉を丸投げして(外部の者への丸投げというのは、役所だけでなく、日本の大企業にも広がっているビョーキです。なまじそういう予算がつくからいけない。役人、あるいは本社員自身が勉強して取り組むべきです)、ろくにフォローもしていないのではないかと勘ぐってしまいます。
コロナ禍は、日本の行政体制の欠陥をまたまた露わにしています。保健・疫病対策の体制が一度できあがってしまうと、皆それぞれのたこつぼにこもってしまう。普段はそれでうまく回っているのですが、コロナのような超大規模案件が起きると、必ずどこかの部署がボトルネックになる。今回は、日本では開業医の割合が大きすぎるために、コロナ患者の収容能力が限られ、そのためにPCR検査の数も抑制するという、本末転倒のことが行われました。なのに、開業医が中心になって作られている日本医師会が自民党の票田であるために、皆腫れ物にさわるようにして、このことを黙っている(最近やっと言われるようになりましたが)。
今回の森喜朗オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長の件にしても、女性差別発言のことは大きく報道されますが(あの発言、当初の報道は小さく、大きくなるまで2日ほどかかっています。何かの思惑が働いている可能性があります)、オリンピックというのは巨額の資金、巨大な利権がグローバル・ベースで戦う場。国内、世界でこれをさばき、抑えを効かせようと思ったら、元総理の森氏のような存在が必要です。「女性に代えたから、これで国内も世界も納得してくれるだろう」ということにはならないでしょう。これから、コロナが収まらない中でオリンピックを強行するという一大プロジェクトを新体制が乗り切ることを祈っています。
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