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日本安全保障

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2024年2月 4日

トランプ再登場で日米同盟をどうする

(これは先月発行のメルマガ「文明の万華鏡」第141号の一部です)

 米国では、トランプの勢いが増している。先日は、デサンティスがレースからの撤退を表明した。トランプが再選された場合のことを考えておかないといけない。日米安保はどうなる? 1期目の彼は、「日本は日米安保にただ乗りしている。もっとカネを出せ」という米国での古典的な言いがかりを奉じて、圧力をかけてきた。「日本がカネを出さなければ米軍は引く」という脅し文句をつけて。

しかしこの圧力は立ち消えになった。安倍総理に、日本は十分以上に払っていることを、ゴルフ仲間として説得されて、彼には珍しく納得したし、何よりも米軍からさとされたのだろう。「日本は十分払ってます。これこれこの通り。そしてアジアでの米軍の展開に、日本での基地、日本の協力はなくてはならないものなのです。あなたの言う、Make America great againのためには、日本はなくてはならない同盟国なのです」と。

 トランプは軍を大事にすると言われる。OBも含めると、軍は米国で一大政治勢力で、大統領選挙でも欠かせない大票田。「在郷軍人会」会員だけでも250万人は数える。国防予算に加えて、「退役軍人省」は実に3000億ドル以上の予算で退役軍人の年金・医療等の面倒を見ている。しかも、今後民主党系の州とトランプ政府が対立すると、連邦軍をその州に導入して「制圧」することも必要になるかもしれない。アイゼンハワー、ケネディー両大統領は、黒人の権利擁護に反対する州に連邦軍を派遣して抑え込んだことがある。だから、「トランプが再選されると日米同盟は終わり」ということにはならないのだ。

しかしそれとは無関係に、日本が自身の防衛力を強化しなければならないことには、国内の理解が深まってきた。トランプの居丈高の対日姿勢とウクライナ戦争が、「非武装中立」という幻想を吹き払ってくれたのだ。日本は既に二隻の軽空母を持っているし――F35B艦載機がまだ配備されていないが――、50隻の護衛艦(うち10隻程度はイージス艦)を所有する。最高級の性能を有するディーゼル潜水艦――この前は南シナ海に突如浮上して中国を驚かせた――を現有の17隻から大幅に増強する決定を行っている。大陸を射程に収めるノルウェー製中距離ミサイル(スタンド・オフ・ミサイル)を既に発注しているし、1月には最大400基もの中距離巡航ミサイル「トマホーク」を米国から購入する契約を結んだ。これの射程は1600キロほどある。以前なら、野党が絶対反対しただろうが、このトマホークの購入契約はほとんどニュースにもならなかった。

 繰り返すが、トランプの再登場は日米安保を壊すものとはならない。自主防衛力増強についても、世論は反対しなくなっている。安保担当者にとってみれば夢のような話しなのだが、好事魔多し。自衛隊入隊志願者が激減してしまった。もともと自衛官募集は難しかったのだが、現在の自衛官採用数は過去最低で、計画人数の半分以下になっている(4月19日付日経)。

ウクライナ戦争で、戦争の敷居が下がったから、若者は自衛隊に入りたがらない。戦時の給与・補償をもっと充実する、高齢者、女性をドローンの遠隔操縦など後方業務、情報処理などの事務、雑務でもっと雇用する、無人兵器を活用する等の対策が必要だ。ウクライナでは、女性が4万人以上も軍に徴募されている(12月26日付sputnik)。

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