タブー消滅か 自衛隊の新装備
(これは、10月26日発刊のメルマガ「文明の万華鏡」第114号の一部です)
安倍政権時代の「安保関連法」で、日本の安全保障に必要なら自衛隊を海外に派遣できる(もちろん種々の条件を満たしたうえで)ことになった。今ではアフリカ東岸のジブチに自衛隊が小さな拠点を持っているし、8月のアフガニスタンからの退去では自衛隊輸送機が赴いた。これらは以前であれば、国会で大問題になっていたものだ。やはり「アメリカに言われて、アメリカのために」でなく、「日本人のために」だと、野党もモノ申しにくいのだろう。
そして自衛隊の装備の面でも、昔なら考えられないことが、国会での「安保神学論争」なしに実現している。「いずも」、「かが」を軽空母に改造して最新のF35B戦闘機を運用するなどは、30年前だったら蜂の巣をつついたような騒ぎになっただろうし、米軍も日本が空母を保有することには反対してきたことだろう。
もう一つ、装備面では中距離の(500キロ以上の射程を意味する)「スタンド・オフ・ミサイル」の購入がある。今年度予算に開発費335億円が計上されている。雑誌によれば三種類あるらしいが、うち一つはノルウェー製である。米国以外に、最先端で最重要の兵器を米国以外から購入すること自体、驚くべき変化なのだが、この中距離スタンド・オフ・ミサイル(敵のミサイルが飛んでこない遠方に控えていることを意味する)はF15などに搭載してはるか先の海上から発射すると、「敵基地」まで届いてしまう。安倍政権はその末期、イージス・アショアに代わって敵基地攻撃能力取得の是非をイシューに仕立てようとしたが、イシューにするまでもなく、自衛隊はスタンド・オフ・ミサイル取得の予算を請求し、すんなり認められてしまったのである。新規・大型装備取得の是非を世論に納得させずに進めることには違和感を持つ。
安全保障問題では、国際情勢の変化もあって、タブーがどんどん消えている。防衛問題を正面からガラス張りで議論できる環境が整ってきた。野党にとってみれば、「それでは国会で政府との対立ドラマにできない。票にならない」ということで、大した議論もなしに防衛予算案を通してしまう。
これでは、国会とは別途、自衛隊の兵器取得の是非を、政府の外部で監査する専門家の組織を設けるべきだと思う。戦艦大和・武蔵建造の誤りを繰り返さないように。
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