Japan and World Trends [日本語] 日本では自分だけの殻にこもっているのが、一番心地いい。これが個人主義だと、我々は思っています。でも、日本には皆で議論するべきことがまだ沢山あります。そして日本、アジアの将来を、世界中の人々と話し合っていかなければなりません。このブログは、日本語、英語、中国語、ロシア語でディベートができる、世界で唯一のサイトです。世界中のオピニオン・メーカー達との議論をお楽しみください。
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日本安全保障

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2020年10月18日

米国の中国叩きにどこまで付き合う

(これは9月23日発行のメルマガ「文明の万華鏡」第101号の一部です)
米国がどこかと対立していると、日本人は「やり過ぎだ。米国は自分が一番であり続けたいだけ」と思いがちだ。それはその通り。しかしどの国が世界で一番であるのが、日本にとって一番ましか、考えてみないといけない

何回も言うが、中国人の多くは善良でいい人たちだ。しかし権力の座にある連中の権威主義(世の中の秩序はエラい順になっていて、これには外国人も従うのが当然、というもの)は、日本人が生きている近代の「人間主義=ヒューマニズム」の時代以前のものだ。中国は世界でも最も早い中世初期には、君主の絶対的な権利を確立して、以後変わらない。君主が大きな利権を抑えて、有力企業家の台頭を許さないから、産業革命は起きずに後進化した。

それを1990年代から外資で補って富を築き、その富で覇を唱え、足らざる技術は海外で企業ごと買収する。そして国内では、個人の人間としての権利を制限する一方で、国際社会では中小国の国家としての権利と尊厳を踏みにじる。「中国は父親格、他の国家は母親、妾、あるいは子供たち」という、はるか昔の世界認識を表に出して愧じない。

普通の日本人は、そうした中国人から「被害」を受けずにすんでいるが、米国がアジアから去れば、日常たっぷりと味わわされることになるだろう。例えば政党も中国系与党一党のみとされ、就職では中国語検定資格取得が必須となるだろう。そして、日本のめぼしい企業は、みんな中国企業に吸い取られ、利益や技術やポストを奪い取られることになる。米国は、ここまであこぎではない。

そして根本的な誤解があると思うのは、米国は中国との貿易を全面禁止しようとしているのではない、ということだ。禁止するのは、最先端技術のみ。その他は、これまで通り取引は自由なのだ。米ソ対立の厳しかった米ソ冷戦時代でも、西側は最先端技術の対ソ輸出を制限していたが、その他の品目の貿易は自由だったのだから。

なぜ最先端技術を禁止するかというと、中国は我々から入手したものを使って我々に飛びかかってくる悪い癖、つまり兵器を開発するし、なりふり構わず、われわれの企業から市場を奪っていくからだ。

そして、米国が先端技術の輸出規制で取る措置に、日本企業は逆らえない。米国の措置を無視して最先端技術を中国に出せば、それは日本でも外為法違反になるし、日本政府が見落としていれば、米国政府がその日本企業を「制裁」する。米国政府はよその国の企業に手を出せないはずだが、世界の大企業はだいたい米国でも手広いビジネスをしているから、そこを「人質」に取られる。つまり米国の規制に従わないなら、今後米国でビジネスを禁じる、あるいは米国銀行との取引を禁じる、と言われるのである。米国銀行との取引を禁じられると、ドル決済ができなくなる。ということは、その企業は海外貿易をほとんどできなくなるということなのだ。これを米国法の「域外適用」と言うが、これは違法ではない。米国市場と米国ドルの力を使った強制措置である。

ただ米国が中国に対してとる措置で、日本としてついていけないものはもちろんある。好例は台湾防衛で、自衛艦・自衛隊機が出動して米軍とともに、台湾を守るために中国軍と戦闘する、あるいは台湾を守るための米国海軍艦船・飛行機が日本の米軍基地から進発することには、日本として同意できない。中国がミサイル、それも悪くすると核ミサイルで日本の米軍基地をたたく可能性が出てくるからだ。戦闘行動に至らないものなら、台湾を防衛するのは日本にとっても大事なことだが、日本ができることには限界があるのである。そしてこのことは、米側に率直に説明しておくべきだ。米国は、日本の立場を尊重するだろう。しなければ、日本での彼らの立場には保証がなくなる。

「中国は強い。中国は大きい」と思い込んで、「長いものには巻かれろ」式のあきらめを中国に示す人もいるが、それはまだ早い。中国の底力は、実はそれほど強くない。いい例が、「アジア・インフラ投資銀行」だ。これが5年前設立された時は、「これに入っておかないとアジアで案件をやらせてもらえなくなる」式の前時代的な恐慌感を持つ人が多かったが、今この銀行はほぼ忘れられている。なぜなら、設立後既に5年もたつのに、実績が小さいからだ。これまでの融資総額は200億ドルで(水膨れの数字である可能性あり)、アジア開発銀行の年間融資平均60億ドルにまだまだ及ばない。中国に巻かれても、日本の全身を覆うものには到底ならないだろう。

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