米軍の駐留費用を日本がもっと支払うなら、日米地位協定の運用をもっと変えるべし
(これは11月27日に発行したメルマガ「文明の万華鏡」第91号の一部です)
米軍の駐留費用の一部を、日米地位協定で定めた以上に日本が支払うことを決めた、「在日米軍駐留経費負担に係る特別協定」(1978年)が、来年更改の時期を迎える。トランプ大統領は、「日米安保条約は不公平。日本は米国を守る義務を負っていないからだ。ついては駐日米軍の費用を全額払え」とか、4倍にしろとか5倍にしろとか言っている。丁々発止の交渉が始まるのだろうか?
日本が今、何に対していくら払っているかは、インターネットで検索できるのでここでは書かない。そのうち、どの項目を4倍、5倍にしろとトランプが行っているのか、思い悩むのも意味がない。合意の中身が米国選挙民に対してどれだけカッコよく見えるか、トランプにとってはそれだけが基準なのだ。
日本は、交渉の過程で、「日本にとって不公平な諸点」の是正を米国に求めるべきだ。その一つとして、日本における米軍の法的な扱いが、NATOにおける米軍の扱いよりも寛大で、日本にとって不公平なものになっている、という問題がある。昨年3月沖縄県が発表した中間報告書https://www.pref.okinawa.jp/site/chijiko/kichitai/sofa/documents/chuukan.pdfによると、次の問題があげられる。
1)ドイツは1993年の改定で、米軍等同盟国軍がドイツの施設・区域を使用する場合、ドイツの法令を適用することを明記した。そして、ドイツ連邦、州、地方自治体の要員による米軍施設立ち入り権も明記されている。
2)ドイツは、ドイツ警察が米軍基地で任務を遂行する権限を明記している。
3)米軍航空機にもドイツの航空法が適用され(1993年に民間機と軍用機の航空管制が統合されている)、ラムシュタイン基地にはドイツの警察官が2名常駐している。
4)日本には横田基地や岩国基地を中心に、米軍が航空管制を行う空域が広く設定されているが(朝鮮半島有事等に備えたもの)、そのような空域はドイツでは存在しない。
これらを是正するには、地位協定を変えないといけないものもある。ドイツは1993年、再統一後に地位協定をかなり大幅に改定しているのだが、日本政府は協定の改定はしない姿勢でいる。協定を正式に改定するとなると、両国の議会でもめて収拾がつかないことになる、と考えているのだろう。
だからこれまでは、この協定の「運用の改善」ということで、改善をはかってきた。それは続けたらいい。そして、米軍が日本上空の管制権を広く保有していることなどは、別に地位協定で決められていることではないようなので、これまで以上に大胆に管制権の返還を求めていくべきだろう。
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