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2013年7月 8日

国家とは何か―ソ連崩壊後の旧ソ連西部の例

7月5日、柄にもなく学習院女子大学で、「「国家とは何か―ソ連崩壊後の旧ソ連西部の例」と題する講演をしたのだが、その内容を主任の阿曽村先生がまとめられたものを、ここにペーストさせていただく。大学などでいつも話していることの一端。
(写真つきでご覧になりたい方は、http://www.gwc.gakushuin.ac.jp/info/2013/07/75_1.htmlにどうぞ)

「「国家とは何か―ソ連崩壊後の旧ソ連西部の例」

はじめに河東氏は、大学で勉強する意味は単に現象についての知識を増すことではなく、諸現象を理解するための有効なツールを得ること・自分なりのモノの見方を確立することにあるとして、諸文明・諸帝国等の地図を使って世界を「鳥瞰」しつつ、地域の見方の有効な手掛かりとなる諸要因を解説された。

次いで、ソヴィエト連邦の崩壊を目の当たりにしたリアルな実感に基づき、国家が果たす「経済活動の指揮者」としての役割について、「計画経済」であったソ連邦崩壊後の「無法状態」の実情を示しつつ図表等を使って分かりやすく解説された。

そして最後に、「サカサマ」の視点、すなわち、各国を外から分析するだけでなく内部事情に立ち入って理解することの重要性を指摘され、結局、「統治とは政治家、官僚、企業家、犯罪界、大衆などのActorが参加する、『利益』『利権』をめぐっての複雑なゲームである」と論じられた。 
 
このような諸角度からの地域の見方に基づき、最後にベラルーシやウクライナの国情やその背景を解説していただいた。日頃私たちが日露関係を考える時、ロシアの東側のみを視野に入れて考えがちであり、ロシアと欧州の間に位置する国々については情報も少なくなかなか理解しにくいところがある。

河東氏の示す情勢分析に、これまで全く知る機会もなかった新しい世界に目が拓けたと感じるとともに、「国家」と一口に言っても実に様々なありようが存在することが実感された。と同時に、その多様性にもかかわらず、複数の人間がいれば必ず生ずる経済活動の動因には、体制等の違いを越えて共通な要素があることも理解された。

「国民の投票と引き換えに福祉を与える国家」という視点には、日本を含めて先進的な民主主義国家と考えられている国々の在り方を再考させるものがあり、改めて、国家としての日本のあり方を真剣に考える機会となった、との感想が多く寄せられた。

比較的難しい内容と考えられたにもかかわらず、ご講演後には日本や他の国々との比較の視点からの活発な質疑応答が続いた。ご講演の構成・概要は以下の通り。

1.地域の見方
「鳥瞰」;タテ、ヨコ、ナナメ、サカサマ

2.タテの諸要因
(1)タテの要因 「文明」
(2)西欧文明とは豊かさのこと
(3)西欧文明とは「衣食足りて礼節を知った」文明である
(4)1989年 東欧諸国の離反
  =「ソ連圏」崩壊=冷戦の終焉
ソ連圏を崩壊させたものの一つは、「西欧文明の魅力」
=ヒューマニズム(人間中心主義)

3.ソ連崩壊で明らかになった「国家とは何なのか?」
(1)当時、モスクワにいて感じたこと
(2)「近代国家」の機能
強力な徴税装置

4.「経済活動の指揮者」としての国家
(1)どこまで経済に関与するか
    間接統制(法律・金融・財政)型=市場経済
    直接運営(国営企業・計画経済)型=政党国家・社会主義経済
(2)税金をどう集めるか?
(3)「計画経済」とは?
(4)役人は普通、会社の経営に向かない。

5.サカサマの視点(内部からの視点)

6.ベラルーシの場合

7.ウクライナの場合

8.経済未発達での「民主化」は混乱を生む
国の富が小さいと、富は少数の者に独占される。このような社会で制度だけ「民主化」すると、これまで利権からあぶれていたエリートが西側から資金を得て「野党」を作り、主流エリートの利権を奪い取ることを助長するだけで、終わりやすい。 
大衆は利権闘争が生み出す混乱の割を食うだけ。

9.日本における「EU」幻想

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