メルマガ「文明の万華鏡」第13号内容は
この1年、「まぐまぐ」社からメルマガ「文明の万華鏡」を発行してきましたが、定期購読の方もずいぶん増えております。このブログには掲載していない記事もずいぶんありますので、メルマガの方もよろしくお願い申し上げます(この記事の末尾に、予約の方法が書いてあります)。
毎月第4水曜日が発刊日ですので、22日に第13号を発行いたしました。その目次は次のようになっております。あまりマスコミには出てこない、それでも日本にとっては大きな意味を持つことをカバーしております。
目次の次に序言を転載しておきます。この1カ月に世界、日本で起きたことについての感想です。
目次
☆今月の話題
「アベノミクス中間決算――企業融資は本当に増えているのか?」
「日本の『匠の技』神話への不安」
「『ソ連システムは鳥インフルより怖い』ことを知らない中国人」
「中国型ポピュリズムは何を生むか?」
「『空中戦』はもう時代遅れ? 現代の空軍」
「米ロが中距離核ミサイル保有へ?」
☆自著出版予告
「米・中・ロシア 虚像に怯えるな――元外交官による『日本の生きる道』」 草思社
長めの序言
アベノミクスで沸いたこの5か月でしたが、世界はそうした日本とはかなり離れたところで動きを活発化させつつある――そういった感じがしています。なぜ世界が動きを活発化させつつあるかというと、それは主要国での指導者の交代、選挙が一段落したからです。中でも重要なのは米国の大統領選挙で、現職大統領も選挙で忙しくなりますし、もし大統領が替われば高級官僚も何千人と替わってしまうため先が読めず、世界中の国際関係(特に紛争がらみのもの)が1年程大きな動きを止めるからです。米国は嫌いだと言っても、米国の影響力が大きいだけに、そうなってしまうのです。
その米国で大統領選が昨年11月に終わったこと(その後も、議会で共和党との争いが続いて政情ははっきりしませんが、景気回復で米国の財政赤字が半分になったことが議会での民主党の立場を楽にするかもしれません)、中国で指導部の交代が昨年11月の党大会から3月の全人代にかけて終わったことから(ロシアは昨年5月に交代ずみ)、国際政治の大きな枠組みを作る米中ロシアの間の関係がそろりと動き出した感があります。
これまでクリントン国務長官が割と厳しめに運営してきた米中関係でしたが、オバマ第2期になってからは、5月12日ケリー国務長官が訪中した際の発言など再び宥和的トーンが強くなっています。但し国防省は尖閣について、中国を牽制する立場を折に触れて明らかにしています。
他方、米ロ関係は米大統領選挙後、むしろ波乱を強めた感がありましたが(ロシアにWTO加盟国としての扱いを認めることに対して米国議会が人権がらみの条件をつけたことに、ロシアが反発)、4月15日にはドニロン米大統領補佐官が訪ロしてプーチン大統領とも会い、米ロ関係をこれから前向きに動かしていくことで一応合意を見ました。それもあって、ロシアはシリアをめぐる国際会議を開くことに同意したのです。
もっとも、5月13日にはモスクワで、米大使館の「CIA要員」が「スパイの現行犯」で一時拘束されましたし、先週はロシアがシリア政府に対空ミサイルS300を提供していたことが蒸し返し報道されるなど、米ロ接近に水をかける動きもありました。米ロ両国政権は、この二つの出来事を大きく扱う構えは示していません。
いずれにしても、オバマ第2期では当面、シリアとかイラン、中東和平問題、そして中国の習近平政権との関係確立に政府の関心、そして報道が傾いている感じがします。そういう中では、「日本? なんとかやっているはずだ。いい子でいるはずだ」と思い込んでいるのでしょうから、日本についてネガティブなことが報道されると、忙しい時に邪魔されたようなイライラを感ずるのでしょう。米国の一部には「安倍=国家主義」という理解が強いので、閣僚や国会議員の靖国神社参拝や、戦争慰安婦の問題、そして「侵略の定義は決まっていない」という総理の国会答弁には、マスコミが飛びつきやすいのです。それみたことか。日本はやはり・・・」と言って。そうなると政府や議会は、「なんで日本はこの忙しい時に。アジアで問題を起こさないでくれよ」というわけで、日本を抑えにかかりかねません。
そういう時アメリカに「おかしいじゃないか。不公平じゃないか。この件はこれこれこうで・・・」と言ったところで、論争の火に油を注ぐだけ。日本は悪者ということにされてしまい、孤立してしまいます。日本にとってはやはり、まず経済を回復させ、尖閣、南西諸島の守りを固め、外交を進めていくのが王道でしょう。慰安婦の問題とか侵略の定義にしても、議論の仕方を考えないといけません。ただ日本国内で叫んでいても、国際的には自分達の立場をさらに悪いものにしてしまうからです。
政府がちゃんと広報していないからこういうことになるんだという批判がすぐ起きますが、広報にはやり方があり、先方の新聞紙面を買い取って主張を載せるというようなやり方は、アメリカのような民主主義国では嫌われ、かえって逆効果になります。こういう問題についての広報は、アメリカの政府や議会、そしてマスコミ、学界の要路に対して、静かに、しかしじっくりと展開していくのがいいのです。「広報活動を広報する」というのは、あまり賢いことではありません。
たとえばワシントンの日本大使館が、「今日は〇〇議員を日本大使が公邸に招待し、侵略の定義問題について日本の立場を説明しました。明日は広報担当の公使が議会に赴き、〇〇議員、○○議員、そして〇〇議員に日本の立場を説明することにしております。日本大使館はこうして・・・」などと宣伝しますと、必ず反動が起こるのです。ひとつは、説明を受けたことを公表された議員は反対派から、「日本の■■(動物の名前)」だというレッテルを貼られて、選挙で苦労することになりますので、もう日本大使の招待には応じないようになるでしょう。アメリカでは日系人より韓国系、中国系の方がはるかに多く、議員には彼らの票が必要なのです。そしてもうひとつは、日本に反対する連中からの巻き返しが猛然と始まり、マスコミはこれを大々的に報道して火に油を注ぎ、視聴率を上げようとします。そうなると多勢に無勢、日本は負けてしまいます。
夏の参院選挙では、野党は「憲法改正反対」で票を獲得する構えを示しています。それに対して与党側が「いや、絶対に憲法は改正するんだ」ということで応戦すると、憲法改正が参院選挙の主要な争点になってしまいます。そうなると、与党側は国内の平和主義層ばかりでなく、米国、アジア諸国から批判を浴びることになるでしょう。その場合、選挙に折角勝っても、憲法改正について手を縛られることになってしまいます。夏の参院選挙は、「せっかく始めた日本再生。衆参のねじれ解消で固めよう」ということをキャッチ・フレーズにしてほしいと思います。
同時に、自民党には「驕らない与党」という姿勢を、参院選で勝利しても是非維持してもらいたいと思います。昨年末大勝ち(総得票数は前回より大幅に少なかったのですが、民主党の大負けに助けられました)しても驕らず、官僚をうまく使って着実、かつ迅速に諸課題に手を付けてきたという印象を国民に与えているからこそ、高い支持率を誇っているのです。今の情勢では参院選で大勝ちすることになるのでしょうが、それは民主党の自失が続いているだけの話しで、自民党がまた傲り始めたら、そしてかき集めた有象無象の新人が馬脚を現したら、支持は潮のように去っていくでしょう。
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