プーチンはまだ上げ潮 5月にユーラシア連合発足
雑誌フォーブスなどが、プーチン大統領を世界でいちばん影響力のある政治家だと持ち上げている。もともと能力のある人だし、経験は世界の指導者の中でも随一だ。オバマ大統領がこの頃すっかり味噌をつけたことで、プーチンの株が持ち上がって不思議はない。
そして、ソチ・オリンピックが無事にすめば、彼の株は更に上がる。そしてまだある。5月には、彼の十八番の「ユーラシア経済連合」設立条約にロシア、カザフスタン、ベラルーシ、もしかするとアルメニアも署名する運びになる。右三国は既に関税同盟、「単一経済空間」という協力体制にあるので、三国でだけならばユーラシア経済連合を名だけでも立ち上げることは恐らくできるだろう。
「ユーラシア経済連合」--そんなものは聞いたこともない人が大部分だろうし、これからも聞かないことだろうが、この連合はロシアを核にEUのロシア版みたいなものを作るという話しなので、割とマグニチュードは大きい。「ソ連崩壊は20世紀の最大の悲劇だった」と公言するプーチンにとって、ユーラシア経済連合結成は経済面でだけでもかつてのソ連の破片を集め直すことになる。
2011年10月3日、プーチン(当時は首相)は「イズベスチヤ」で、自分が大統領になったら「ユーラシア連合」を立ち上げる、この「超国家的機関」は世界の極の一つになる、欧州とアジアの間の架け橋になる、民主主義と市場経済を奉じ、旧ソ連諸国だけでなくどの国も加盟でき、リスボンからウラジオストックまでをカバーする、とぶち上げた。
その内容はかなり漠然としているが、いろいろの発言を突き合わせてみると、「バルト諸国を除く旧ソ連諸国を、EUのような経済連合としてまとめたい。EUのように超国家的なユーラシア連合委員会を作って、そこで圏内の経済・通商政策をできるだけ統一したい」、ということになる。
そして上記の「ユーラシア連合委員会」には、胎児とも呼ぶべきものが既にできている。「単一経済空間」のための「ユーラシア経済委員会」がそれで、ここではロシア人のフリスチェンコ元副首相が議長として働いている。EU委員会とは違って、どうしてもロシア人偏重の組織になっているようで、そこがロシア以外の諸国に警戒され、嫌われる原因にもなっている。
しかしそれでも、プーチンはやると言ったらやるだろう。そして6月にはまたソチで、今度はG8首脳会談。オバマ大統領はその頃は秋の中間選挙で頭がいっぱいかもしれず、また「お客さん」になってしまうかもしれない。どうも世界の母屋を、ロシアとか中国とかドイツが我が物にし始めたような気配がある。
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