2012年2月 8日
冷戦が終わったから脅威はなくなった、という議論
いろいろなセミナーに出ていると、「冷戦はもう終わったのだから、どこそこの国は日本にとって『脅威』になる、というような考え方はやめましょう。アメリカさんにもそう言ってやりなさい」と言う人がいる。
まあ冷戦の時代、アメリカに言われてソ連を「脅威」に見立てて騒がされた経験があるから、そう言っているのだろう。
冷戦当時も、ソ連は日本にとって実際は大した脅威ではなかった。と言うか、アメリカが極東でソ連と対立しなければ、ソ連は日本にとって脅威にならなかっただろう。だからこそ、冒頭で挙げた日本人も、「冷戦は終わったのだから・・・」と言いたいのだろう。
だが冷戦当時、ソ連は欧州方面では真の脅威だった。ソ連は欧州を占領できるだけの兵力を持っており、またそのような作戦計画も練っていた(3日間の進撃でNATO軍を大西洋に追い落とす)。
そして今、北朝鮮や中国海軍・空軍は、日本本土あるいは日本の南西諸島で作戦できるだけの兵力を持っている。情勢の展開次第では、その兵力を実際に使いたいと彼らが思う局面も出てくるだろう。ならばそれら兵力は日本にとって脅威であり、これに対しては抑止力(ここでまた、抑止力と実際の戦争を混同する人たちがいる)を持っておくべきなのだ。
「脅威」というものは、人間がサルだった時代から一貫してある。冷戦などその人間の歴史の一コマに過ぎず、それが終わったから世界が至福千年・万年になるというのだったら、自衛隊ももういらないではないか。
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