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世界はこう変わる

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2011年7月28日

シルクロードの歴史決定版

現代の味気ない政治や経済の話に疲れたとき、僕はシルクロードの歴史の本をひもとく。たとえば中国と呼ばれる、かっちりした国家のはずだった領域の西の端は砂漠の中にずぶずぶとのめり込み、気がつくとイスタンブール、まぶしい紺碧のマルマラ海の前に立っている――こういう感じで、思考が広がっていく感じがするからだ。

加藤 九祚先生という、広大なユーラシアを舞台とした考古学者がいる。戦後ソ連に抑留された時、ロシア語をものにした。もう89歳なのによくウズベキスタンに行っては、今でも発掘を続ける。ときどきテレビに出てくると、その稚気とユーモアにあふれた語り口は、若い女性の人気をさらう。

その加藤先生は既に多数の著作を出版しておられるし、個人雑誌と称して「アイハヌム」という美しい題名の論文集を毎年出している。これがまた珠玉の文章の集まりなのだ。

そしてその加藤先生が今度は翻訳を出された。ウズベキスタンで仏教遺跡を発掘している相棒、ウズベキスタンの代表的な考古学者ルトヴェラーゼ氏の書いた「考古学が語るシルクロード史」だ。中国語で応有尽有、「あるべきものはすべてある」という、シルクロード地域の歴史の総まくりとも言える本だ。

この地域の歴史、わからないことは沢山ある。流れを変えてしまった川、かつて豊かな水に囲まれながら、今では砂漠に埋もれてしまった古代都市、これらがメソポタミヤのシュメール人やトルコに駆けて行ったトルコ人の故地であるかもしれない。ルトヴェラーゼ氏は余計な推測を提示することなしに、今の段階でわかっていることを淡々と書き記すだけである。

ルトヴェラーゼという名が示すように、彼はグルジア人とロシア人の混血である。それが今では遠い異国になってしまったウズベキスタンで一生暮らすようになってしまったことについては、複雑な思いもあるに違いない。その彼の一生をかけた大著を、加藤先生が友情からその流麗な筆で翻訳され、昔勤務していたことのある平凡社から出されたのである。高価だが、一生大事にしておくに価する本だと思う。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4582441173/ref=pe_2102_24407432_snp_dp

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