Japan and World Trends [日本語] 日本では自分だけの殻にこもっているのが、一番心地いい。これが個人主義だと、我々は思っています。でも、日本には皆で議論するべきことがまだ沢山あります。そして日本、アジアの将来を、世界中の人々と話し合っていかなければなりません。このブログは、日本語、英語、中国語、ロシア語でディベートができる、世界で唯一のサイトです。世界中のオピニオン・メーカー達との議論をお楽しみください。
ChineseEnglishRussian

世界はこう変わる

Automatic Translation to English
Automatic Translation to English
2011年4月13日

2011年3月のアメリカ――印象記7 (中国経済予測)

では、中国の今後の力の基礎を成す経済力について、アメリカの専門家たちはどう見ているか。そこを見てみたい。

専門家達は、中国経済の先行きに慎重
中国経済というと世銀とかゴールドマン・サックスなどがこの15年ほど、「すごい、すごい。日本を抜く。アメリカも抜くだろう」などと囃したてるものだから、アメリカでは早や国民のかなりがGDPで世界一は中国なのだと思い込んでしまっている。こうした早まったパーセプションが、現実の政治を動かしていくのだ。

ところが中国経済は相変わらずいびつで、経済成長の大部分を土地再開発で稼ぎ出している(数年前までは貿易黒字も経済成長の半分程度を支えていたが)。いわば、これまでタダだった国有地に突然、「これは1平米百元」という立て札を立てて業者に売りつけ、業者はそこにオフィスビルとかマンションを建てて高値で売り出し、こうしたすべてをGDP統計に計上しているのだから、数字上は急成長確実だ。だがこうした投機的行動の原資は、輸出で稼ぎだした貿易黒字なのだ。アメリカへの輸出が急減してそれが何年も続けば、内需拡大でしのぐと言っても、それは銀行融資や政府予算の垂れ流しと、インフレ率亢進で終わりかねない。インフレは既に亢進して、政権の不安の種となっている。

そして「市場経済になった」と言ってはいるものの、中央政府、地方政府による企業活動への規制・介入は強く、国営系企業の幹部は生え抜きよりも、全国をローテーションで回って昇進していく官僚もどきの人員によって埋められている。個人の所有権尊重、政府とビジネスの間の区別といった、市場経済の鉄則が守られていないから、今後自力ではなかなか成長への活力は得にくい体制なのだ。

そして共産党・政府の官僚たちは、西側経済の停滞をいいことに、「中国独自の価値観」(具体的には儒教などを、市場経済や民主主義の「西側的」価値観に代わるものとして持ち上げる)を持ち出すことで、自分たちの既得権益を守ろうとしている。
ちょうどロシアも同じような(いや、外資が少ないだけ、もっと絶望的な)状況にあり、それをむしろ大衆が支持している面があるので、西側で不況が続く場合には、世界はまた市場経済圏と権威主義経済圏に分かれて行くかもしれない。

そんなことを僕が言ったのに対して、今回会った3人の中国専門家は、ほぼ同意してくれた。3人とも、中国経済の実力、先行きに慎重な見方をしているのである。主な意見を紹介しよう。
①ワシントンの中国専門家:
「中国は世界経済なしに生きていけない。だから市場経済から外れた社会主義的要素を前面に出すとしても、歩留まりがある。短期的には経済状況が悪化して国内情勢が混乱し、軍指導者たちが前面に出てくる可能性もあると思っている。習近平の指導力は弱い」

②黄亜生・MIT/Sloan School(ビジネススクール)教授
黄教授は、ボストンの日本総領事館に紹介してもらった、中国経済の専門家である。日本ではあまり知られていないが、反中でも親中でもなく(中国出身)、現場の視察を重視する学者である。日本に非常に関心を持っているが、まだ大学方面の人脈がないそうだった。

(僕の方から、上記のわりと辛めの中国経済認識を述べたら、彼はこう言った)
「だいたい賛成します。ただ中国経済は御存じのとおり多様複雑で、携帯電話製造のように非常に活発な民営企業もあります。地方政府が弱いところ、ないし干渉しないところでは、民営企業が強い。そういうところでは企業家にも強い性格を持つ者が多く、全力で自分の境界を広げようとしている。それは広東省について言えますし、IT部門についてもそうです。

私自身、中国経済については悲観一色でも楽観一色でもない、といったところです。確かに製造業は中国独自のものは未だ弱いものがありますが、外資主導でかまわないと思います。また部品・材料のサプライ・チェーンが現地に成立していますので、外資も工場を別の国に簡単には移転できないでしょう。
ただ、銀行の不良債権が膨れ上がっていることは憂慮しています。社会主義経済においては債務取り消しがよく行われましたが、今日の中国でこれをやると、その企業の株価が暴落するでしょう。また債権を取り消した銀行は、その財務状態に対する不安から預金取り付けを受けることになるでしょう。

私はまた、社会における大きな格差の存在、汚職、そして政府と企業の人事が混然一体となっていることなども、中国経済の成長を阻害する要因だと思っています。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.japan-world-trends.com/cgi-bin/mtja/mt-tb.cgi/1490