Japan and World Trends [日本語] 日本では自分だけの殻にこもっているのが、一番心地いい。これが個人主義だと、我々は思っています。でも、日本には皆で議論するべきことがまだ沢山あります。そして日本、アジアの将来を、世界中の人々と話し合っていかなければなりません。このブログは、日本語、英語、中国語、ロシア語でディベートができる、世界で唯一のサイトです。世界中のオピニオン・メーカー達との議論をお楽しみください。
ChineseEnglishRussian

世界はこう変わる

Automatic Translation to English
Automatic Translation to English
2010年11月 3日

9月のロシア 政治情勢

ロシアの政治においては、2012年大統領選でプーチン、メドベジェフのどちらが立候補するのかが最大の関心事になっている。それは今でもそうで、今でもどちらなのかはわからない。「プーチンが決めていない。メドベジェフは大統領を続けたいようだ」というのが今の相場か。おそらく大統領選直前のぎりぎりまで決めないだろう、と言う者もいて、僕もそうではないかと思う。

政権の内部事情に詳しい者によれば、「プーチン首相もメドベジェフ大統領も、今のところ2012年立候補したいと思っている。2012年の選挙はかなり公正なものとなり、当局による操作の余地が小さくなるものと思われているため、両者とも今から選挙運動を始めている。メドベジェフには自前のチームがいないと言われるが、実はかなりのチームもできている。テレビ局は両者に色分けがされている。第1チャンネルはプーチン支持、第2チャンネルと独立テレビ局はメドベジェフ支持というように。
ただメドベジェフには、プーチンが与党「統一」党首として票田を組織的に押さえているような強みがない。メドベジェフにも何らかの政党の後ろ盾が必要だろう」ということだった。

最近いくつかの地方では、任命制の知事と公選された州都の市長の間で権力闘争が起きているが、これはひとつには州都の集票マシーン支配権をめぐる争いでもあり、メドベジェフ・プーチンの間の勢力関係にも影響する話であるということらしい。

他方、ルシコフ市長解任のあとモスクワ市長に任命されたソビャーニンがテクノクラートとしての真価を国民に見せつけることとなれば、メドベジェフ大統領・ソビャーニン首相という選択肢も出てくるかもしれない。プーチン首相は2012年に出馬すれば、おそらく2期、つまり12年務めることとなる可能性が大きく、そうなると最後は72歳になってしまって人生を楽しめない。

メドベジェフ大統領は、外見よりよほど厳しい人物なのだという評価を内部の者から聞いた。優柔不断、プーチンのあやつり人形、というのが彼の通り相場になっているが、決然たる行動に出る時もあるということらしい。
他面、下に対して無用にいばったり、腐敗したところはないらしい。今回乗ったタクシーの運転手はかつて要人の公用車を運転していたが、メドベジェフは仲間の間でも評判がよかったそうだ。つまりむやみに威張ることもなければ、甘すぎることもない、運転手を同等の個人として扱ってくれるということだ。
(運転手仲間で「腐敗している上に威張っている」と毛嫌いされている人物もいるのだが、誰なのかは言わないでおこう。外国ではあまり話題にならない人物である)

今回僕がモスクワにいた9月28日、ルシコフ・モスクワ市長がメドベジェフ大統領によって解任された。日本で言えば、石原都知事が菅首相に解任されたようなものだ。ルシコフ市長は1992年から市長を務め、2007年に三選された。その後メドベジェフ大統領が長期にわたって座にいる公選知事に圧力を加えて辞任させていくなかで、ルシコフも血祭りに上がったのである。
9月27日、ルシコフは海外での休暇から帰ると直ちに辞任を表明するものと皆から思われていたのだが、なんと帰国一番、自分では辞任しない、解任されるまでやると言明したのである。巷では、「ルシコフはプーチン首相の支持を頼みにしている」とか「これはプーチン首相がメドベジェフ大統領の権威を下げようという企てだ」とかの観測が渦巻いたが、翌日メドベジェフ大統領はルシコフをあっさり解任してしまったのだ。

ルシコフは骨のあるところを見せ、一時は地方首長の公選制復活を標榜して民主主義者を気取って見せるかと思えば、数日後には「2012年大統領選挙でルカシェンコ・ベラルーシ大統領と組んで出馬する」というネタがマスコミに流れたりもした。だがそれもせいぜい1週間、政党を持っているわけでもないルシコフは、その74歳という年齢もあって、急速に過去の人となっていった。

あとに任命されたのは、副首相兼内閣官房長のソビャーニン。彼については、別の項でもう書いておいたが、もしかすると2012年の首相、あるいは大統領候補に大化けするかもしれない人物かもしれない。父方の祖父は100歳以上まで生きたというから、大統領になればロシアの安定をあと50年も保証できる。これまで控え目で目立たなかったので、お徳用な政治家だとでも言おうか。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.japan-world-trends.com/cgi-bin/mtja/mt-tb.cgi/1285