2010年9月18日
天津での印象9:変わる中国の対アジア戦略
(1)今回は、東アジアについての日中韓シンポジウムにも出たのだが、中国人専門家の東アジア協力に対する物言いが、これまでとは違ってきた。それは、東アジアで主導権を取る意図をふたたび露わにしたものである。
これまで東アジア協力と言うと、「日中韓がエンジン、ASEANが運転席に」という言葉で表わされるように、とかく張りあいがちな日中韓よりもASEANを緩衝材として前面に出すものであったのだ(ASEANの外交官は、「この東アジア協力というクルマ、エンジンがドライバーに行き先を命令しようとするんだよね」とこぼしていたが)。
ところが今回中国の専門家は、「中日韓が主導権を取ること」を、数年前のようにふたたび明確に主張した。そして東アジア首脳会議よりも「ASEAN+3」の枠組みを重視するべきことを主張したのである。そのなかには、米国をアジアから排除しようとの意図もあることは言わずもがなで、ことごとに「東アジア域内でまとまる」べきことが強調されていた。
(2)日本においては、「東アジア共同体」創設を提唱する者の動機はさまざまである。ある者は米国をアジアから除外することに主眼を置き、またある者はまったく逆に、日米同盟を固めた上で「東アジア共同体」を中国をエンゲージするために使うという発想を持っている。
だが中国が一人勝ちで強くなって周囲の警戒心を誘い、米国とも関係を緊張させる今の状況では、「東アジア共同体」は少なくともこれからしばらく、「お呼びでない」状態が続くのでないか?
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.japan-world-trends.com/cgi-bin/mtja/mt-tb.cgi/1245
コメント
今回の尖閣列島の事件に関する中国の対応を見ていると、仰る様に「ソ連化」との喩えがぴったりですね。このような対応(西沙でも同じ様なトラブルを引き起こしているようですが)をしていて、結局は国際社会の信頼(というよりそもそも先進国として振舞える価値観を共有できる相手として認められる)を失っていく事になることが自覚できないのがなんとも不思議です。
(それは中国の一部の人たちに沁みついた「ソ連のDNA」のなせるわざ。しかし世界では、「日本が先に手を出した」という中国の言い分を信じていると思います。早くビデオを公開しないと、公開しても、「これまで時間をかけてねつ造してきたのだ」という中国側のプロパガンダに負けてしまいます。
明治以来の日本の宣伝下手を直さないと。
河東)