天津での印象8:中国がソ連化する危険性
(1)中国は内では「和階社会」を、外では節度を重んじているはずなのに、この頃の行いときたら、南シナ海ではASEAN諸国を警戒させて米国による警告まで喚起している。これまで「G2」を唱えるほどだった米国では、この頃は対中警戒論が目立つ。そしてロシアは7月極東での大軍事演習で、「大軍が攻めてきた場合に」その鼻づらで核地雷を爆発させる模擬演習まで行った。
これまで押し込められていた中国が、アヘン戦争以来の屈辱を一気に晴らそうという気持ちはわかるが、そのためにかつてのソ連のような国だと世界から思われる危険をおかしている。これは外国企業の対中投資にもマイナスであり、労賃が上がっていることからも、輸出用の生産基地を中国から移そうという動きを強めてしまう。
(2)外国が中国を輸出基地として扱うのをやめると、中国をめぐる状況は1970年代のソ連に似てくるだろう。中国での生産は国内消費向けが中心となるだろうが、その場合先進設備を輸入したあとは何年も技術革新をしないこととなるだろう。これが1970年代のソ連で起きたことだし、中国でもフォルクスワーゲンのPassatが20年前の姿のまま、今でもベストセラー・カーとして生産され続けている。
(3)中国は、あまりにも早くイレデンティズム(昔の恥を雪ぐ)を見せてしまったのだ。あるいは、指導部がこれを抑えきれなかったのだと言ってもいい。そしてこれは、西側金融資本に「中国はすごい、中国はすごい」と囃されて(株価を吊り上げられて儲けられて)いい気になってしまったことの反映でもある。
(4)そして、中国が日米同盟への反発をまた露わにしてくる気配を今回感じた。それは、日本の世論を親米、親中の間で二つに引き裂くか、あるいは対中警戒感を強めさせる結果で終わるか、それは今後の中国の出方次第だ。
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