天津での印象6:日本に対する気持ち
中国人の対日感情は、一口ではとても言えない。四六時中、日本、あるいは「反日」のことばかり考えているのでないことだけは確かだし、またいつも好悪両様の感情が共存しているので、一概に言いきれないのだ。われわれの対中感情と同じことである。
今回の中国滞在はちょうど、尖閣列島周辺の領海で中国人船長が拘留されたときに出くわしてしまったが、シンポジウムで中国のある評論家が「日本経済モデルの命運は尽きた」という趣旨を声高にまくしたてたのに対して学生たちから歓声が上がったほかは、ナショナリズムの吐露にぶつかることも特になかった。その中で、いくつか目についたことを書いておく。
(1)中国では政治家はアイドルとしては扱われないようだ。だからルックス重視の現代日本の政治家は、非常に新鮮に映る。僕の講義では、スライドで見せた中で小泉進次郎と丸山珠代が絶大の人気を博した。小泉進次郎などはもう以前から、中国のインターネット、携帯の世界では人気が高いそうで、「進次郎さんが、あの(靖国神社に参拝した)小泉首相の息子だなんて、信じられな――イ。」というのが中国人女学生の声。
(2)講義1日目には尖閣列島で中国漁船が海上保安庁の船に接舷されて船長が逮捕されるという事件が起きた。中国のテレビではあまり報道されなかったらしいが、環球時報が報道して中国のインターネット、携帯には反日メッセージがあふれたらしい。そのせいか、講義2日目の朝の教室の空気は微妙に違っていた。その後会食した日系企業の会社員(中国人)も苦笑をうかべて、日本が譲らないだろうことを予想しながらも、やるせない怒りの情を見せていた。
(3)3日目くらいの夜中国のテレビを見ていたら、ニュース解説が始まって、それが日本で発表された防衛白書のことだった。防衛白書は日米安保が必要であることの根拠として、沖縄以南の南西諸島の防御をあげたらしいが(それはそれで全くそのとおりだと思う)、中国のテレビはこれを「日本の新たな要求」(つまり南西諸島周辺海域を今回初めて日本のものと主張し始めたと言わんばかり)として、解説を繰り返していた。
南西諸島は以前から日本領で、中国はこれに異議をさしはさんだことはないので、その周辺海域も当然、日本の管轄に属する。なのにこれを「日本の新しい要求」と言い立てて中国の世論をmisleadし、反日に向けて駆り立てて自分の立場をよくしようというのは、古いソ連時代のプロパガンダの手法そのままだ。これでは、国際社会を納得させることはできまい。
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