オーストラリアは大国ーーGDPではロシアとならぶ
8月末にニュージーランドへ行ったことは書いたが、そのあとオーストラリアにも一日だけだったが寄って安全保障問題の専門家とだべって帰ってきたので、印象を書いておく。
ニュージーランドのところでも書いたが、大洋州を知ったことで南の方へ、何かすーっと風が通ったような解放感を感じた。ぎしぎしした東アジアに押し込められずに考える軸が広がったということだ。
他方、日本に長くいると、アングロ・サクソンなのかアイルランドなのか知らないが、彼らの支配慾剥き出しのバイタリティーには、もう対抗しようとする意欲もわかない。年もとってもう疲れた。
いずれにしても日本にだけいては、日本人はいつまでたっても世界では羊のように食べられてしまう。
豪州の地勢的位置
今回はじめて気がついたが、人口わずか2000万人のオーストラリアが、その7倍の人口をもつロシアとGDPの規模がほぼ同じなのだ。2007年で1兆ドル強である。これはG8並みの経済力なのだ。そして大洋の真ん中にあるニュージーランドと違って、大国インドネシアが隣にあるので、その外交政策はニュージーランドよりはリアルな問題を扱うことになる。そして広大な排他的経済水域の防衛は、ニュージーランドと同じく課題となっている。
兵力は5万人しかいないが、国内ではやることもあまりないだろうから、国連PKOなどに手厚く人を出せるということだ。
だからオーストラリアに着いてみると、完全に大国の雰囲気だ。入国手続きが厳格なことといったら。国力にまかせて人を従わせるという雰囲気。
だがそのあとは、やはり粗放的。飛行機の荷物、9番から出てくると表示してあるのに、6番ベルトで他の便のと一緒に出ていて、乗客は皆そこで待っているのだ。細かいことには無頓着。大国的粗放と厳格さが混在している。
中国、ロシアに対する姿勢
2007年12月外交官出身のラッド氏が首相になって以来、オーストラリアは中国寄りになったとされてきたが、ラッド首相もそれほど単純ではない。中国は景気がいい時はオーストラリアの資源を買い占めんばかりの勢いで押し掛けるが、ひとたび都合が悪くなるとひいていくことが今回明らかになったために、契約を大事にする日本は見直されただろう。
それに新疆で暴動が起きた時、オーストラリアでウィグル人民族問題についての映画を放映しようとして、中国政府から強硬な抵抗を受けたことも、中国のイメージを下落させた。中国の外交官も、オーストラリアに対してあまりに強硬にでれば逆効果になることはよく知っていただろうが、北京政府からの訓令には逆らえなかったのだろう。この官僚性は、中国の体制的弱点なのだ(日本でもあるが)。
そしてシドニーなど大都市では、中国人、ベトナム人が固まって居住し犯罪も起きているようだ。
オーストラリアはAPECの創設に貢献した国だ。今この国の専門家達は、台頭した中国も含めた集団機構を(米国も入れて)アジアに作るべく種々の提言をやっている。その中でロシアをどう扱うかは、領土問題を有する日本にとって一つの問題なのだが、オーストラリアの専門家達はこの点については一致した意見はないようだった。いずれにしても、問題意識のトップに据えるべき問題ではないと考えているようだ。
エピソード
○キャンベラは国会議事堂に向けて街中の道がハブのように集約し、その前は人造湖になっている。一昔前の映画に出てくるような、未来の理想都市の造りだ。だがインフラが古くなっていて、僕のホテルの電話は外部からかかってきて答えても、相手にその声は聞こえないのだった。
英国の植民地だった点で同じの、ニューデリーに感じが少し似ている。
○エチオピア人のタクシー運転手が言っていた。「5年前、人権難民枠でやってきた。弟はエチオピアの首相府勤務で、ノルウェーに派遣されて国際関係を学んだんだ。『国際関係』なんて、あんなのホビーだぜ。金なんかとても稼げない」 ごもっとも。
で僕から、「「アフリカ経済、最近成長してるんだってな」
「え?」
「最初賃金が安くても、うまく経営すれば・・・(暮らしは良くなるんだよ)」
「中国人が来てやっている。エチオピアのチープレーバーを使っている。道路も作ってる。でも壊れるんだ。借金だけが残る」
○帰りのJALではスチュワーデスの3分の1か半分くらいが中国人だった。日本語堪能だし、楊貴妃みたいな女性ばかり揃っているから、乗客も満更でないようで。国際化賛成。
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