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世界はこう変わる

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2024年11月16日

気をつけないと国は瞬時に蒸発する  ローマ帝国の場合

今、「失われた近代を求めて」(仮題)という新著の出版を準備中。その中から、西ローマ帝国消失の契機を描いた個所をここにアップしておく。というのは、3週間ほど前の選挙で大統領に返り咲いたドナルド・トランプ氏が、国を改造しようとするあまり、混乱を招き、その中で予算の執行が止まったりすると、世界中の米軍が立ちいかなくなる、軍事力を失った米国は世界での力を失うことになるのではないかと危惧するからだ。
「元首」であるオクタヴィアヌスにどんどん権限が集中され、彼の次からは「皇帝」となった経緯、そして帝国末期、大土地所有の貴族たちが税金を納めず、軍隊を維持する資金もなくなった時、西ローマ帝国は意外と短期に消滅したのである。
以下が、新著からの抜き書き。

―-何度も言うように、「国」というものは利権の集積物なので、なかなか壊れない。二〇二五年の米国はトランプ大統領の下で社会の分裂がひどくなっているが、米国をもうやめようという者はいない。一九九一年ソ連が崩壊したときもそうだった。エリツィンがゴルバチョフを追い出すために、地方をけしかけ(モスクワに税金を送るなと言ったのである)、ウクライナ等の指導者とともに「ソ連を解散する」という超法規的な宣言をしなければ、ソ連は今でも生き残っていることだろう。

西ローマ帝国では何が起きたのか? 直接的には、軍隊の弱化が一番大きな要因だろう。まず既に言ったように、有力者の大農園が労働力を囲ってしまったことが、兵員不足を招いた。そして二世紀末の天然痘の流行で人口が減少したことが、それに追い打ちをかける。カラカラ帝が属州の住民に、兵役につくことなしにローマ市民権を与えることにしたことで、兵員不足に拍車がかかる。それまで属州の市民は何年も従軍して初めて、市民権をもらえたのである。

そして最後に、英国の歴史学者ブライアン・ウォード=パーキンズがその著書「ローマ帝国の崩壊」で言うように、「無政府化と税収の激減による軍隊の消滅が十年ほどのうちに起き、悪循環となって事態は急激に悪化した」のだろう。彼によれば、蛮族に荒らされて税負担能力を失ったイタリア半島中央部と南部で、五分の四もの減税が行われている。これが軍事力の「蒸発」をもたらした可能性がある 。軍隊が無力化するには二、三年で十分だろう。定員を充足していない軍は、非力だからである。これは、現代の米国でも起こり得る深刻な危険性であるーー 

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