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世界はこう変わる

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2024年7月 9日

志願者が減っている現代の軍隊をどうするか

米国の戦略問題専門家として知られるEdward Luttwakが、現代の軍隊は死傷者を出すことを恐れるあまり、戦争できないものになっていることを指摘している(6月17日 Un Herd。

ーー欧米諸国も敵対勢力も、戦う準備ができていない。約30年前、私は「勇士のいない戦争post-heroic warfare」という言葉をひねり出し、戦争で死傷者を出すことへの許容範囲が非常に狭くなったという新しい現象を指摘した。それは1993年、クリントン大統領が、18人の米兵が戦死したのを契機にソマリアを放棄したことに始まる。マーガレット・サッチャーは、フォークランド戦争で亡くなった255人のイギリス兵の遺族に一晩中手紙を書き続けた。

それから40年後、ウクライナ戦争においてロシアは、予備役を新たに動員することも、新規徴兵を戦場に投入することもできずにいる 。
ウクライナを支援するNATOの欧州諸国も、軍を戦場に投入することには慎重である。フランスのマクロン大統領が2月に、ウクライナに武器と軍隊を派遣するよう呼びかけた際、イタリアの国防相と外相は、ウクライナには兵士を1人たりとも派遣しないとわざわざ公言した。

かつてないほど多くの人口を抱えながら、戦死・戦傷に対する許容度がますます低くなっているのはなぜなのか? 私は1994年に、歴史上の戦争は "余剰な(spare)"子弟(次男以下の息子のこと)たちによって戦われてきたという単純な仮説を提示した。20世紀半ばの時点でさえ、欧州の平均的な家庭には数人の子供がいた。しかし今日、欧州全土の女性の平均出生率は2人を下回り、2022年のEU平均は1.46で、しかも依然として下がり続けている。

・出生率1.1の中国でも、台湾に脅しをかける一方で、2020年インドとの国境で4名の将兵が死んだ時、当局はこれを長く秘匿した後、メディアで英雄として称揚し、遺族に優遇措置を与えている。戦死者4人にこれだけ入念な対応をする政権が、台湾をめぐる戦争で1日に4,000人を失うかもしれないとしたら、どう対処できるだろうか。

・欧米諸国は確かに、アフガニスタンやイラクに多くの部隊を派遣した。しかし多くの場合、部隊は厳重に要塞化された基地の近くでの慎重なパトロールに終始したし 、レバノンとイスラエルの国境のUNIFIL(国際連合レバノン暫定駐留軍)に派遣されている欧州諸国の軍も、ヒズボラとの戦闘は避けている 。

・こうして欧州では、軍には戦闘能力があるというのは幻想に転じているのだ。しかし、敵対するロシアや中国にも、ある程度までは同じことが言える。Post-heroic時代と呼ばれる現在、真のパワーバランスは計算し直す必要があるーー。

以上がLuttwakの論文の骨子。
・彼はこの頃、西側の識者の気になっていた点を明確についた。この頃の世界では、軍に人が集まらない現象が目立つ。つまり徴兵制は多くの国で行われていないが、青年たちは軍に志願しようとしないのである。
米軍も志願制であるが、最近は募集人数目標を満たせていない。その傾向は特に、白人の間で強い 。しかも、昨年7月20日付FTによれば、17~24歳の米国人の4分の3以上が今、メンタル面で国防総省の入隊基準を満たさない。

英国を筆頭に、NATO加盟国の大多数も志願制を持している。ドイツも2011年に徴兵制から志願制に移行したが、志願者の質に問題があり、極右が浸透して、22年11月にはクーデター計画が摘発され、多数の逮捕者を出している。ドイツは現在、徴兵制の一部復活を検討中。スウェーデンは2017年、徴兵を復活(但し年間1万名弱)している。

日本では2023年、自衛官新規採用数が過去最低水準で、計画人数の半分以下となっている 。極東で戦争が実際に起きるリスクが嫌われているし、企業が賃上げを続けていることも大きい。

世界は、軍隊の構成・兵器の種類で大きな変革期にある。ウクライナ戦争を見ると、歩兵を多数投入して敵地を占領する段階に至る前、ミサイル、誘導砲弾、ドローン等、無人兵器での戦闘が長く続くようになっている。これは、無人兵器の操縦要員、補給、メンテ要員を飛躍的に増員する必要性を示す。

またルトワックが指摘するように、高度の技能を持ち、高給をもらっている要員による特殊部隊(米国の特殊部隊Special Operations Forces(SOF)は2019年には約7万名を数え、8000名以上が100を超える国に派遣されているとされる )、あるいは現役軍人たちも高給で釣りだして組織する民営軍事会社(米国で多い。頻繁に改名する。ロシアでも昨年殺されたプリゴージンのWagner社の後継はいくつもある)が用いられる例も増えている。

・ 以上、現代の軍隊は青年の兵役忌避だけでなく、ドローン等新種兵器が戦法を変えるという、大きな変革期にある。無人兵器と歩兵の兼ね合い、無人兵器の操縦・後方支援要員の確保、宇宙兵器、電子・電磁・レーザー兵器の開発と運用、これらに見合った国防省・軍隊の機構改革が必要になる。
日本でも官民の知恵を結集して総合的な将来像を作るべき時だろう。

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