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世界はこう変わる

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2024年5月10日

西欧近代モデルは黄昏なのか

(これは4月末発行のメルマガ「文明の万華鏡」第144号の一部です)

 この頃は、グローバル・サウスとかBRICSとか中ロ同盟とか、米欧日はもう落ち目ということになっている。19世紀の西欧「近代」を形作った諸要素はもうボロボロ。機械でモノを大量生産する産業革命型の工業は中国、インドに吸い取られる時代だし、19世紀西欧での生活水準向上と中産階級の広がりが生んだ民主主義も、その故郷の西欧諸国ではもうボロボロだ。

西欧諸国では学校でギリシャ・ローマ古典を読まないようになっているから、ヨーロッパの青年には文化的な背骨が感じられない。西欧白人に顕著だった健全な自立意識、個人主義は、万国共通のPCゲーム文化、日本のアニメ、コスプレ礼賛ですり減っている。

米国はもっとひどくて、自由と民主主義は成功した階層の独占物。企業では経営者も労働組合幹部も自分の利益追求で、労働組合は法外な要求で経営者をひるませ、海外へ脱出させてしまう。政治資金は青空化されて(つまり実質的に無制限で、かつ匿名)、金持ちが政治を壟断。議員を使って連邦政府を縮小し、税負担を軽減しようとする。そして民主党のネオコン勢力は、途上国の政治に力で介入することを躊躇わない。もう少し、「足るを知る」ことを知らないと、世界は米国から崩れていくだろう。

今は「ロボット・新生」とも言うべき時代。ロボット・AIを設計し、使い、使われる超エリートと、「そうでない人達」の大軍に、社会は分裂してしまうかもしれない時だ。先進国はロボット・AIの扱いにとまどうが、他方、ロシアや途上諸国はまだ19世紀の頭(夜郎自大とやらずぶったくり)でモノを考え、行動している。どうしたらいいだろう。

中国・インドは新しい時代を開くのか?
 
 あと、付け足しになるが、中国、インドの経済はこれからもどんどん伸びて世界を支配するようになるか、という問題がある。付け足しと書いたように、僕はそうなるとは思っていない。確かに19世紀までは中国、インドの想定GDPを足すと、世界の半分近くに達していた時もある。しかしそれは、経済の大宗が農業と商業で、その生産・消費量は耕地面積と人口によっていた時代のこと。工業・サービスが中心の現代では、人口大国即経済大国とはならない。

 そして近年の中国、インド双方の高度成長は、外資の流入に促されたものである。確かに19世紀英国の産業革命も、オランダからの資本流入にそのかなりを負っている。しかし中国、インドの場合、資本だけでなく、技術面での西側への依存度が大きすぎる。社会も、経済成長に有利な構造にはなっていない。中国では共産党が市場メカニズムの機能を妨げるし、インドではまだ州毎に法制・規制が異なっていたり、農民が土地を手放したがらなかったり、歴史が残したいくつもの障害物が経済成長を妨げる。

 こうして、米国の資本家が好きな15%以上の利益率を実現できる国や事業はどんどん減っていき、「足るを知ら」なければやっていけない時代がやってくるのだろう。しかしそれでは、進取の精神、イノベーションへの意欲が衰える。貢献度の高い人間(誰がどうやって測るのかは問題だ)は航空・新幹線料金の生涯無償化とか、無償介護とか、〇〇賞の授与とかの名誉で称えるようなことをやっては? 多分、足りないだろうが。

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