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世界はこう変わる

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2024年1月 2日

これからの世界、そして国は 無政府状態 へ

(これは12月22日発行のメルマガ「文明の万華鏡」第140号の一部です)

Foreign Affairs10月12日号でMichael KimmageとHanna Notteという二人の学者が連名で、"The Age of Great-Power Distraction"という論文を出した。「世界のことどころではない大国たち」とでも訳そうか。一言でどういうことかというと・・・

――世界の論壇では近年、中国、欧州、ロシア、米国のような大国にのみ照明を当て、恰もこれら大国だけで世界は決まるかの論調が支配的だが、実際にはこれら大国はそれぞれ内外の制約要因を抱えて海外で十分の関与ができない。現代は、パワーが分散して無政府化する時代、大国が世界のことどころではない時代なのだ――。

全く同感。この中では、「無政府化」という言葉がすとんと胸に落ちる。第2次大戦後の世界の枠組みの多くは、形骸化している。典型は国際連合であり、国際連盟にはなかった拒否権を大国に認めたことで、肝心な時には何もできない組織になってしまった。

経済面ではGATTを継承したWTOが、共通の(低い)関税率という貴重な枠組みを守ってくれているものの、貿易・投資紛争が生じた時の仲裁を行うパネルは、米国の横車で無力化されて機能を大きく失ったままになっている。IMFは、加盟国間の通貨レートの安定をはかるために作られたが、その資金力は不十分で、大型の通貨危機には対処できない。そして、今の米国には、独力で国際秩序を維持できる力と意欲は後退している。

ただ、世界が無政府化していると言っても、貿易・投資関係は続いている。陸では紛争が絶えないが、海を通ずる通商はまだ維持されている。今、フーシ派が紅海の通航を妨げているが、こうした動きが世界に広がったら大変だ。今後、この航海の自由の確保こそ、新たな国際機関、取決めを作る上でのとっかかりになるかもしれない

そして諸国が「ドル離れ」をしているとされるが、その言い方には誇張がある。ロシア制裁では、「ロシアがドル離れをした」のではなく、「ドルがロシアから離れた」のが正確な言い方だし、大きな貿易黒字を持つ中国でも、人民元を国際通貨として使わせる意図はなく、ドルでの決済を続けている。つまり政治的には無政府状態になっても、経済はグローバルな結びつきを維持している(中国、ロシアを除く)ということである。

先進諸国でのガバナビリティー喪失

もう一つ、今の世界で目立つのは、先進諸国での「国家」がその有効性をどんどん失ってきていることだ。海外に製造業を移し過ぎて、国内の成長力が減退。格差が拡大していることが、その背景にある。

国民が余裕を失う中、民主主義がポピュリズムに堕しており、政治家は有権者を説得するより、有権者に気に入ってもらう一時しのぎの政策、あるいは単なるキャッチ・フレーズを考え出すことで精いっぱいだ。

これでは、上記の「国際秩序で本当に必要なものを、実効力のある仕組みで守る」という課題には取り組めない。分野毎に、オープンな専門家集団を形成し、日本の代表2,3名を選んで(選び方が問題なのだが)、少なくとも10年以上世界を相手に働いてもらう。そうしなければ、日本や世界で必要な人脈も形成できない。

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