Japan and World Trends [日本語] 日本では自分だけの殻にこもっているのが、一番心地いい。これが個人主義だと、我々は思っています。でも、日本には皆で議論するべきことがまだ沢山あります。そして日本、アジアの将来を、世界中の人々と話し合っていかなければなりません。このブログは、日本語、英語、中国語、ロシア語でディベートができる、世界で唯一のサイトです。世界中のオピニオン・メーカー達との議論をお楽しみください。
ChineseEnglishRussian

世界はこう変わる

Automatic Translation to English
Automatic Translation to English
2023年9月11日

炭酸ガス排出削減だけでは、世界の暑熱化はもう防げない

今年の夏はメチャ暑かった。昨年もそうだった。

これまで世界での温暖化問題についての議論は、「2030年までに世界の気温上昇を(産業革命以前に比べて)1.5度以下に抑えるためには、二酸化炭素の発生を何%削減すべきかという一点に集中してきた。

しかしこの1.5度という敷居は、昨年と今年の猛暑で、すでに超えられようとしている。炭酸ガスだけが世界の温暖化の犯人であるかのように、上から目線で説いてきた欧米の専門家たちは、現実にはるかに先を越されて、茫然自失の状況なのではないか?

温暖化と寒冷化は世界史上、何度も繰り返されてきた天然現象だ。「二酸化炭素だけに温暖化の原因があるのではないのかもしれない。太陽の活動が盛んになっているのか、地球の地軸が傾いているのか。もしそうならば、人間にできることはないではないか」と、彼らは秘かに考え始めているのではないか? 

8月24日付Economist誌は、それに加えて、今年は「エル・ニーニョ」現象(南米沖の太平洋の海水温度が上昇して、世界的な異常気象をもたらす現象)が起きると指摘し、次のように言っている。

ーー熱帯地域では洪水や日照りが起きることになり、食料不足、疫病が起きるだろう。前回のエル・ニーニョは2014~16年のもので、南アフリカでは食料生産が20年ぶりの水準に低下、Zikaヴィールスが蔓延し、インドネシアでは大規模な山火事が起きて、地域の大気が汚染された。
ペルーでは世界最大の漁業であるアンチョビーが不漁となり、インドが不作を予想してコメの輸出を止めたために世界のコメ市場が揺さぶられた。
エル・ニーニョの到来に今、備えを始めなければならない。
エル・ニーニョはその名の示すとおり(スペイン語で神の子を意味する)、クリスマス周辺でピークになることが多い。それもあり、エル・ニーニョがもたらす被害はかなり事前に予測できる。嵐に襲われそうな地域に、経済援助の資金を事前にふりむけ、インフラを強化しておくことができる。
いくつかの国際援助機関は動き出している。国際赤十字・緑十字は、17か国で気候予測体制を整備し、2025年まで災害予防予算の4分の1をここに向けようとしている。WHOはWMO(世界気象機関)と提携して、どこに医療品・要員を集中的に振り向ければいいかを予測しようとしている。
今回の問題は、エル・ニーニョの被害を受けるであろう国々が、コロナ禍とか、ウクライナ戦争による穀物価格の高騰など、つい最近の災害から立ち直っていないということである。これらの国々は、エル・ニーニョに備える資金を持っていないので、助けなければならないーー

面白いのは、この論説はエル・ニーニョに特化することによって、「気温の上昇をどうやって抑えるか」というこれまでの議論から、「気温の上昇が起きてしまった時の対策」に議論の焦点を移動させていることである。

炭酸ガス削減の努力は続けるとして、それとは別途に温暖化が起こす異常気象、世界の気候帯変化、海面上昇に対する施策、途上国に対する援助に議論の方向を向けていくべきだろう。

日本がODA等でできることは多い。温暖化で新たに生ずる湿潤地での植林促進、乾燥化していく地域での点滴農業の普及、風害への対策、海浜村落の丘陵部への移動等である。

ロシアのように、単に途上諸国の子供っぽい反米感情を煽るよりも、役に立つ支援を行うことで、途上諸国の本当の支持を得ることができるだろう。


トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.japan-world-trends.com/cgi-bin/mtja/mt-tb.cgi/4279