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世界はこう変わる

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2023年3月19日

ウクライナの次はモルドヴァか

(これは2月末発行のメルマガ「文明の万華鏡」第130号の一部です)

ウクライナの南西、ルーマニアとの間にモルドヴァという小さな旧ソ連共和国がある。独立しているが、ウクライナとの国境地帯に「沿ドニエストル」という細長い自称共和国を抱えている。

ここにはソ連時代からの大武器庫(東欧から引き揚げたソ連軍のものも)があって、ロシア軍が今でも「平和維持軍」と称して残っている(1000名以下と思われる)。その量は2万トン。全部で10キロトン相当の爆薬。広島原爆の半分以上に相当する。

モルドヴァが独立してもう30年も経つから使い物になるかどうかわからないのだが、今ウクライナ戦争で一日2万発も砲弾を消費(浪費)し、さすがの国内備蓄も後がなくなってきたロシアにとっては(昨年8月18日付Jamestownは、22年1月には130~150万トンの砲弾・ロケット砲弾が備蓄されていた、8月現在で70~90万トンしか残っていないものと思われる。これは、あと4ヶ月~6ヶ月分、通常の生産能力は砲弾、多発ロケット砲弾合わせて毎年23万トン、としている)使わないのももったいない、といったところだろう。ましてウクライナの手に入りでもしたら、目も当てられない。

しかしロシアは、この沿ドニエストルの武器庫の兵器をクリミアや、東ウクライナに輸送することはもうできまい。鉄道はウクライナ側に押さえられているし、ロシア海軍はこのあたりの制海権ももう持っていないからだ。

 それでも、ロシアはモルドヴァ政府を揺さぶっている。ここではSanduという女性大統領がEU寄りの立場を持しつつ(反ロシアではない)頑張っているのだが、議会では彼女の党は多数議席を持っていないので、そこをつかれて、反政府集会の恒常化等、いろいろ嫌がらせを受けているわけだ。

 この工作は、ウクライナ戦争開始前から行われているのだが――ロシアの諜報機関に染み付いた業のようなものだ――、ウクライナ戦争でロシアが受け身に回っている今、「モルドヴァを荒らして何になる? 却って沿ドニエストルを守りにくくするよ」と言いたいところだ。

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