ウクライナ戦争と世界の興亡
(これは6月22日に発行したメルマガ「文明の万華鏡」第122号の一部です)
先月は、「ウクライナ戦争とロシアの興亡」という一文をアップしたが、その後の推移をみていると、「ウクライナ戦争と世界の興亡」、つまりやられるのはロシアが先か、西側が先かという問題になってきた感がある。
米国はEU、特にドイツにロシア原油・天然ガスの輸入停止を強く働きかけたが、まさかと思った自国内でもガソリン価格は4倍に急騰(それでも日本水準以下)、インフレが止まらない。
そのインフレを止めるために、FRBは乱暴な利上げを繰り返す。それは株価急落を起こしているだけでなく、不良債権を急増させ、2008年のような金融の目詰まり=金融不況を起こすことで、全般的な不況を呼ぶかもしれない。それは11月の中間選挙と時期的に一致して、与党の民主党は大敗。辛うじて維持している上下両院での多数議席(上院では半々になっている)を失うことは確実視されている。
EUも「麻が乱れたごとく」とはこのこと。まず各国内の統治のタガがはずれている。生活の不満は国の内部だけでなく、与党の内部にも政策上・人脈上の分裂を起こして、政治の麻痺を助長している。マクロンの与党連合は19日の下院選挙の決選投票で、議会の多数議席を失った。ショルツは与党の社会民主党が地方選で大敗を続ける中、ロシアからの石油・ガスの輸入停止、石炭発電の再開という、殆ど自殺行為を迫られている。制裁というものは、「肉を斬らせて骨を斬る」ものでなければならないのに、EUの場合、逆になりかねない。
日本も、物価高で参院選に敗北すると、岸田政権もよれよれになってくる。世界の主要国は皆、よれよれでふらふら。ならば中国の一人勝ちかと言うと、そうでもない。トランプ制裁のアッパーカットとその後のコロナで起こした脳震盪がまだ治らない。成長率は本年見通しが4.3%強。これは、中国ではほとんどゼロ成長に等しい数字だと思う。海岸地域での生活水準はもう日本並みに見えるから、それでもいいのだが、失業率が公称6.1%。青年の間では18.2%というのは、深刻な問題だ。毎年1000万人もの大卒者が出て、その多くが正業を見つけられない。政権は乾いた薪の上に座っているようなものだ。
そして、「経済のためにならないことは何でもする」感のある習近平指導部が、李克強首相を頭とするテクノクラート集団から反発を受けているのがもう目に見えるようになっている(人民日報などに発表される記事など)。習近平は秋に予定される共産党・党大会で、「党主席」に選出されることを策謀している。これまで彼は党総書記だが、「党主席」は改選の規定がなく、実質的に終身のポストなのだ。この終生独裁を可能にするポストは毛沢東、華国峰、胡耀邦と続いたが、1982年廃止され、そのままになっている。鄧小平は1977年復活すると、毛沢東の独裁体制の残滓を一掃するべく憲法を改正。自分は、党中央軍事委主席であることで、最高実力者としての地位を担保していた。
で、この党大会を予定通り開けるかどうか。党主席になれる見通しがつかなければ、延期するのでないか。
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