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世界はこう変わる

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2020年3月12日

米国共和党の大スポンサー死去の波紋

米国にKoch Industries という、非上場企業としては米国で2番目に大きいコングロマリットがある。石油を中心としたビジネスで、年間1100億ドルの売り上げを誇る。この企業のオーナーはKoch兄弟。そのうち次男と三男のCharlesとDavidは政治資金を拠出するためのKoch財団を設立。「小さな政府」(要するにカネのかかる政府事業はやめて、海外プレゼンスも縮小し、法人税を下げろというもの)を推進するために共和党議員に資金を手厚く供給。これら議員は「茶会派」と呼ばれて、オバマ政権時代には大暴れした。

2016年出版されて評判になった本で、"Dark Money"というのがある。訳書も出ている。著者はニューヨーク・タイムズ所属記者のJane Mayer。これの新版の序文には面白いことが書いてある(と言うか、まだそこしか読んでないので)。それによると、2016年の大統領予備選挙で、Koch兄弟はトランプだけは忌避して、資金をつけていなかった。ところが本選では、2012年頃から大統領候補になり得るとしてKochが金をつけていたペンスが副大統領候補になったことで、ウラの関係ができたはず。そしてトランプ当選後もKoch兄弟のカネは共和党議員に流れており、中でも一番もらっていることで有名なのがポンペオ国務長官なのだ。

ところが昨年8月、Koch兄弟の中でも最も政治活動に力を入れてきたDavidが病死した。この後のKoch財団の行動に変化が生じているのかどうか。トランプが法人税を大幅に下げ、環境問題のパリ協定から離脱、シリア、アフガニスタンからの米軍撤退のメドをつけたことで、Koch兄弟は目的の大半を達成している。これからどうするのだろう? 彼らのカネは誰に、何を目的として向かうのだろう?

3月のForeign Affairsに、Koch財団のカネで作られたQuincy Instituteの研究員による論文が発表されたが、それはいくつか面白い点を含んでいる。一つはトランプの政治手法を、「国論分裂を煽るポピュリズム政治」として暗に批判している点。もう一つは代替エネルギー開発を大々的に称揚していることだ。これも、石炭、石油、ガス業界を支援してきたトランプに真っ向から挑戦するものである。今後トランプが調子に乗り過ぎて、或いは株価を崩壊させて共和党内部から反発と疑念を受けるようになった場合、Koch財団が共和党からトランプの対抗候補を突如立てる――ということになったら面白い。

なお、代替エネルギー開発への軸足移転というのは、石油を軸に財を築いたKoch Industries自身の、石油からの転換戦略を意味していないだろうか? 前者は世界全体の運命を変える。そして後者はロシア等、産油経済国の運命を奈落に突き落とす。

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