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世界はこう変わる

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2019年12月25日

政権不在 が増える世界の先進国たち

(これは11月27日発行のメルマガ「文明の万華鏡」第91号の一部です。少しその後の変化を記入してあります)

 世界の先進国で、「政権のない国」が異常に増えている。スペインではこの4年で総選挙が4度も行われたにもかかわらず、連立政権が成立せず、近く再度総選挙を迎える。イスラエルでも同様の事情で、この1年で3度目の総選挙をしようとしている。オランダもよく政治の空白が生じる国で、2017年には225日にわたって今の4党連立が成立せず、その後も19年5月の上院選挙で連立4党は上院での多数議席を失っている。ベルギーに至っては、2010年6月の総選挙後541日にわたって連立合意が成立せず、総選挙で敗北した政党の党首が暫定的に首相を続けたことがあり、これは世界記録ということになっている(Wikipedia)。英国も、BREXITで総選挙を何度も繰り返す始末。

そしてこれまで保守のキリスト教民主同盟と社民系のSPD、そしてバランサーの役割をする自民党、ないし緑の党という安定した政権構造を続けてきたドイツも、その賞味期限を迎えている。キリスト教民主同盟と社民党が後退する中で、西部では緑の党、東部では「ドイツのための選択肢」が伸長し、2021年秋に予定される総選挙の結果次第では、連立政権がなかなかできず、再統一後ドイツでは初めての早期選挙ということになりかねない。そして米国も、与野党対立の激化と、トランプと政府の間の遊離で、一貫性のある政治はできなくなっている。

 民主主義国は、大政党が依拠してきた業界団体、労組等の社会グループが砂状化したために、これまでの対立軸が消え、移民や格差等、新たな問題を核に政党の組み換えが起きているのだろう。

日本では、社会のあらゆる階層の問題が自民党の内部で処理されてしまうという、中国、ロシアに似た状況が戦後ほぼ一貫して続いているが――これは独裁と言うより、ムラの社会を名主がコンセンサスができるまで調整してまとめていた、昔の伝統を引きずったものだろう――、安倍後はどうなるかわからない。昔のような自民党内での政権たらい回しを、世論は決して許さないだろうからだ。

もっともスペインやイスラエルのようにリーダー不在でも、人々の生活に支障は出ていない。たった一人のリーダーが、大きな社会の全責任を負って回していく制度は、もう古くなったのかもしれない。

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