トランプは 戦後の世界体制 をどこまでこわすか その一 終戦時のアレンジメント
(これは6月26日発行のメルマガ「文明の万華鏡」第86号の一部です)
トランプが戦後の世界体制をどこまでこわしたか、こわすのかを議論するには、その「戦後の世界体制」なるものがどんなものだったのか、定義しないといけない。
第2次大戦が終結に向かう頃、連合国は早くも戦後の世界体制(安全保障と経済の枠組み)を決めようと動き出した。1944年8月にはダンバートン・オークスで国際連合の設立を決め、1944年7月にはブレトン・ウッズでIMF、世銀の設立を決める。GATTは、国際貿易面の国際機関として同時期に合意された「国際貿易機関」(ITO)が、米議会の批准を得ることができなかったため(米議会は、国際機関が米国内のことがらに介入するのを嫌ったのである)、合意事項のうち関税に関する部分だけを独立させ、「関税及び貿易に関する一般協定」(GATT)として発足したものである。これは、米国が戦前に結んでいた二国間協定をベースにしたものである。
この時、世界をリードする国は英国から米国に「正式に」代わった。米国は第2次世界大戦の間、国債を大量に発行して軍需生産を賄い、GDPを倍増させ、戦後はそれを民需に転換することで、1950年には世界全体のGDPの27.3%を占めていた。そしてマーシャル・プランや貿易赤字の形で富を他の先進国、次いで中国に移転し、その結果現在は表向き、世界のGDP中24,3%(2017年)を占めるに過ぎない。しかし米国のカネで復活したEU諸国、及び日本のGDPと合わせると、日米欧で世界のGDPの45%強を占める。中国を含めると約3分の2に達するのである。そしてこれは実質的にはドル経済なのだ。世界経済における米国の支配力は、終戦直後に優るとも劣らないのである。
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