中国経済大崩れのシミュレーション 日本は中国経済救済をするのか?
(これは2月27日発行のメルマガ「文明の万華鏡」の一部です)
いくつもの指標が、中国経済大崩れの可能性を示している。
何度も言うように、年間30兆円を超える貿易黒字を国内インフラ建設等で膨らませて高度成長を演出してきた中国だが、「中国で安く組み立てて対欧米輸出に回す」やり方はもう通らない。1985年プラザ合意直後の日本に類似した立場に、中国経済は置かれているのだ。
これが起こす不景気を防ぐため、中国は予算や銀行融資をばらまき、膨大な社債発行を放置しているが(予算はこの数年毎年、30兆円を上回る赤字、銀行融資残高は約1500兆円、社債残高は2018年5月末で300兆円相当)、これは不良債権を膨らませ、金融危機の到来を一層確かなものにする。
人民幣への信用度が低下したため、中国企業はドル資金の調達で8%近くもの法外な「中国プレミアム」を要求されるに至っている。3兆ドルを超える外貨準備があることになっているが、対外債務はその約半分に達しているし、外貨には企業が保有しているものもあるので、政府、中央銀行が人民幣を買い支えるために自由に使えるものは1兆ドル内外だろう。
中国の外貨繰りは、実は不安な状況にあるのだ。経済の環のどこかでデフォルトが起きると、金融が逼塞する可能性がある。国営企業が主体で、債権・債務は帳簿の上だけ、踏み倒しと支払い猶予は常態という社会主義経済では、金融の目詰まりは日米欧諸国におけるほどの意味は持たないが、それでも取引は滞り、それは連鎖反応を起こして、経済活動を止めていくだろう。
カネ余りの中で景気が停滞すると、インフレになるのか、デフレになるのか、或はその両方を兼ね備えたスタグフレーションになるのか。おそらく耐久消費財は需要が急減して叩き売られる一方、食料品・日用品の方はハイパー・インフレという状況になるのではないか? 年間840万人も輩出される大学新卒者が職を得られずに不満分子と化するのと相まって、社会には黄巾の乱当時のような不満が渦巻くことだろう。くしくも今年は中国共産党政権成立70周年。ソ連共産党政権が69年で滅亡したことを考えると、そろそろ賞味期限という声も出てくるというものだ。
中国はその時、「世界経済のために中国を救え」という論法を展開し、日本にも支援の要請をしてくるだろう。日本はどうする? 本気で救おうとすれば、こちらが倒れる。後で恨まれない程度の支援しかできない。それはまず、ASEAN諸国も含めた「チェンマイ取り決め」を活用して、中国に円やドルを人民幣とのスワップで融通することから始まる。そしてIMFが対中支援融資を取りまとめるだろうから、その中の3分の1程度を負担する。
と同時に、中国国内情勢が荒れた場合に備えておく必要がある。観光なら査証なしで日本を訪問できる今の態勢を、いつでも一時停止できるようにしておかないと、日本は中国からの難民であふれかえることになってしまうだろう。一方、中国のいくつかの地方が自治性向を強めると、核ミサイルの管理権のありかが問題となる。
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