中国経済変調
現在、中国も西側も、中国経済を過大に評価している。中国経済は2000年代を中心に、年間30兆円を上回る貿易黒字と外国直接投資、そしてそれを国内のインフラ投資・不動産投機に回して膨張したものである。2016年も貿易黒字は5100億ドルに及んでいる。他方、2008年以来の資金の垂れ流しは不良債権となって累積しているだけでなく、政府の財政赤字は2017年3兆元強もの巨額に上っている。
・習近平は「中国製造2025」(先端技術製品製造でも、中国が優位に立とうとするもの)を標榜して世界をおびやかしているが、経済を官僚が支配するところの大きい中国にあっては、官僚は政策を口実にして予算、銀行融資を引き出す。そして1兆円もの投資で半導体工場を建設しては、自分の実績、出世の足掛かりとする。同時に資金の一部を横流し、横領する者もいるだろう。投資が本当にペイするかの計算などは二の次だ。
・この頃は、科学技術でも中国は日本を追い抜いているのだそうで、なぜかと聞くと、英語での論文の発表数や、外国の研究者との共同研究の数で日本を抜いているからなのだそうだ。しかし、ここにもカネが随分からんでいるだろう。発表される論文の多くの質には問題がある。そして中国がカネを出すから共同研究をしたがる西側研究者は多く、成果を互いに引用するから論文引用数が増える。
つまり、中国の経済は水膨れで脆弱、かつ非効率な点が多々あるのである。
・習近平政権が統計の透明化を推進していることで、近年の成長率の低下が露わになっている。一帯一路を担うものとして喧伝されたAIIB(アジア・インフラ投資銀行)も、資金集めのための債券発行すら未だ行っておらず、設立後5年弱経ったにもかかわらず、今年の投融資予定総額は35億ドルで、日本の円借款の4分の1程度の規模にしかなっていない。
・以上から言えることは、中国はこれから高転びする可能性があるということである。米国が中国からの輸出4600億ドルの半分以上に相当する2500億ドル分に高率関税をかけると脅していること、そして米国からの部品輸出停止で電子製品製造大手の国営ZTE社が破綻の危機に瀕していることから、中国の株式市場は降下を始めている。実際、中国の輸出の50%は外資によって行われていると言われるので、米国への輸出が難しくなれば、中国は成長のための資金を大きく失うことになろう。
・日本は中国に半導体製造機械、電子部品等を大量に輸出している。今後気をつけないと、米国に法外な罰金を科されたり、米国でのビジネスを禁じられたりすることになろう。軍事転用可能な製品の輸出は輸出貿易管理令で規制されているが(冷戦時代、ソ連・中国等に戦略物資の輸出を禁じていたココムの名残りである)、これを日本の企業に周知させるべきである。
(最後の点については、詳しいことを講談社の現代ビジネスに書く予定です)
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