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2018年5月31日

米中経済関係 クアルコム社をめぐる血闘の一幕

(これは、5月23日に「まぐまぐ」社から発売したメール・マガジン「文明の万華鏡」第73号の一部です。
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 米中貿易協議は5月18日、一旦お開きとなったが、この中でZTEとかクアルコムとか聞き慣れない(?)企業が話題になった。この件は米中経済関係の特徴をよく表しているので、少し書いておく。

ZTE(中興通訊)は深圳に本社。中国を初め世界主要市場で、スマホ、携帯販売の上位を占める。しかし携帯電話、スマホの製造では米クアルコム社の演算用半導体(CPU)が必要だ。パソコンのインテルに相当するスマホの頭脳部分で、これがないといい携帯、スマホはできないのである。

クアルコムは自分で工場を持たない、「ファブレス」企業の典型で、CPUの生産は台湾のTSMC(臺灣積體電路製造股份有限公司)が請け負っている。と言うことは、台湾から中国へのクアルコム印CPU輸出を、米国の対中輸出として勘定すれば、米国の対中貿易赤字も随分減るだろう。

もう一つ面白いのは、中国がそのクアルコムの買収を策して、米国に撥ね付けられたことだ。元々クアルコムは業容拡大のため、オランダの車載半導体 大手NXPセミコンダクターズ社買収を企図、主要市場である中国の独禁当局に独禁法上問題がないかどうか、うかがいを立てた(これは、米国やEUのような大きな市場を相手にどの国の企業もやることで、中国の専横ぶりを示すものではない)。

中国は本来、この審査を4カ月以内には終えることにしているのだが(外国企業を妨害していると取られたくないので)、今回は審査を引き延ばす一方で、息のかかったシンガポールのブロードコム社を通じて、クアルコム買収の挙に出た。しかし米国の対米外国投資委員会は3月、これを、米国の安全保障上の理由で止めた。

他方、米当局は4月16日、中国の華為、ZTE2社が、制裁を冒してイラン等に製品を輸出したことを問題視、制裁として両社への米国製品(クアルコムのCPUを含め)供給を禁じた。

これで、西側から部品と機械を輸入しては製品を組み立て輸出する、中国のビジネス・モデルの脆弱性が露わになった。ZTEは携帯の生産を中止し、経営危機を噂されるようになった。

 習近平はトランプにZTEを救うよう要請し、トランプは「是正を下僚に指令した」とツイッターで言い立てたが、18日貿易協議が終わってみると、クアルコムCPUの供給再開については何もニュースがなかった。但し同日、中国独禁当局はクアルコムによるNXPセミコンダクターズ社の買収案件審査を再開すると表明した。裏での激しいせめぎ合いをうかがわせる。

米国は力技の末、クアルコムを中国による略取から守り、返す刀でクアルコムの拡張M&A案件を中国にのませようとしている。どちらが悪いというわけではない。力と力の勝負。世界は荒くれ者の時代。外交は真剣勝負の時代になった。

以上の例は、日本が基幹部品や製造機械を抑えているから安心と思っていても、最終製品の組み立てと販売でけた違いの資力をつけた中国の企業にいとも簡単に買収されてしまう危険があることを示している。クアルコムも株主は、中国系企業による買収と、それによる株価の急上昇を欲していた。

電子立国とか言って威張ってきた日本は、お株を韓国、台湾、中国に奪われてしまったのだが、まだ昔取った杵柄で、部品や機械の製造と輸出で生き延びている。これまで外国に取られると、生産と雇用は日本に残っても、利益の多くは日本に残らない。買収されないよう、気をつけてほしい。

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