核ミサイル無法時代へ?
(これは、12月27日に「まぐまぐ」社から発売したメール・マガジン「文明の万華鏡」第68号の一部です。
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オバマ大統領は理想に燃えて、グローバルな核廃絶をもくろんだが、ロシア、中国、そして北朝鮮までが言うことを聞かず、結局米国だけが割を食った。核ミサイルに予算が行かず、すっかり老朽化してしまったのである。
で、今更新が進み始めている。その中で、ソ連、ロシアが米国と結んだ核兵器軍縮条約(複数)が期限を迎えたり、骨抜きにされたりしつつある。これは米国が一方的に進めていることではない。ロシアも中国も核ミサイルを更新、増強し、米国と互いに競争しているのである。
米国は、ICBMの主力を長年務めてきたミニットマン3の後継を開発中である。GBSD(Ground Based Strategic Deterrent)と総称している。また、新型空中発射型巡航ミサイル及び、これにオプションとして搭載できる新型核弾頭の開発が始まっている。前者は、日本の自衛隊が購入を検討しているJASSM-ERよりも更に射程が長く、超音速設計がなされると見られている。
後者についてはロシアが、射程500キロ以上の「中距離」核ミサイル(但し陸上配備のものだけ)開発・配備を禁じた米ソINF撤廃条約(1987年)に違反する、この条約を無効にするものだと非難している。もっともそのロシアも既に、射程1000キロの巡航ミサイルKalibr、及び4500キロのKh-101を開発ずみで、2015年12月にはロシア領内の軍艦から―陸上発射ではないという言い訳のために―シリアに発射している。
以上の事情で、現在米ロ間では、「核軍縮条約の黄昏」がしきりに論じられる。ICBMの核弾頭の数を双方1550ずつに制限した新START条約(2011年発効)は2021年が期限。そしてINF条約は既に骨抜き状態にあって、新たな規制をしなければ無法状態に突入、という状況にある。
中国保有のICBMについては、新たな状況(米国において)が生じている。というのは、中国のICBMはこれまでの推定60基程度よりもっと多い75-100基程度あるのではないか、しかも中国のICBMの多弾頭化が進行し、最近黒竜江省に配備されたDF-41 は6-10個の弾頭を搭載できる、そうなると中国は最大400程度の弾頭を保有していることになり、米国のサイロ収納型ICBMのミニットマンのサイロ400基を第一撃で全滅させることができる計算になる、つまり中国は第一撃を放つ誘惑に駆られやすくなる、という意見が現れてきたのである。
このため、米国が陸上配備ICBM(GBSD)をサイロ固定式から移動式にするということも理論上は考えられる。但し移動式ICBMの開発は、より多くの予算を必要とする(この箇所は岡崎研究所研究員の村野将氏の見解による)。
こうなると、米ソ、米ロ間の核軍縮・管理条約にとって代わる体制は、今と随分違うものになるだろう。中国を引き込まずに米ロ間だけで更に弾頭を削減するのは、もう非現実的である。そして核ミサイルを保有、あるいは開発中のイラン、パキスタン、北朝鮮なども抑えつけなければ、核大国の間だけで軍縮しても危なくて仕方ない。ここらへん、米ロ中の間では、多分水面下の摺り合わせが始まっていることだろう。
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