暫定予算が恒常予算になっている米国
――「オバマ・ケア縮小と税制改革」の解けない結び目――
(これは、11月22日発行したメルマガ「文明の万華鏡」第67号所載の記事の一部です。
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米国では10月から新しい会計年度が始まっているが、予算案はまだ議会を通っておらず、ものごとは暫定予算で動いている。これでは新しい政策が実行できないのだが、今のところ今年度予算がいつ議会を通るのかはわからない。
と言うのは、今審議中の税制改革(法人税を35%から20%に引き下げるのが眼目)が議会を通らないと、税=歳入の見積もりができないからだ。それにトランプ政権が目の敵にしているオバマ時代の医療保険の一般化=オバマ・ケアを、大幅に縮小する法案が議会を通らないと、税制改革で法人税を下げるための財源が手当てできない。オバマ・ケア縮小に対しては共和党内部にさえ抵抗があるし、税制改革にしても下院は既に通過したものの、上院は今別の案を審議していて、下院を通過した法案との間で調整を要する。「年度予算未成立。暫定予算でしのぎ」の状況は、昨年度では今年の5月まで続いているので、米国ではもうこれが当たり前のことになったのかもしれない。
米国経済は今のところ、この法人税引き下げへの期待と、FRBの次期議長にハト派(金融緩和継続派)のパウエル理事が就任する見通しになったことで上向きに推移しているが、前者の期待が最終的に潰えた時には株が暴落し、景況も悪化するだろう。後者は今のバブル状況を助長して、これも株の暴落と金融恐慌につながりかねない。
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