Japan and World Trends [日本語] 日本では自分だけの殻にこもっているのが、一番心地いい。これが個人主義だと、我々は思っています。でも、日本には皆で議論するべきことがまだ沢山あります。そして日本、アジアの将来を、世界中の人々と話し合っていかなければなりません。このブログは、日本語、英語、中国語、ロシア語でディベートができる、世界で唯一のサイトです。世界中のオピニオン・メーカー達との議論をお楽しみください。
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世界はこう変わる

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2017年10月30日

今は本来なら世界を前に進めることができる時

(これは、10月25日発行したメルマガ「文明の万華鏡」第66号の冒頭文です。
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今は国際情勢の一つの潮目。中国は党大会、米国は世界の景気を左右する連銀の次期総裁指名、欧州はドイツの総選挙を終えてこれからEUの政治が動き出し、そして日本では総選挙で安倍長期政権ほぼ確定、というわけです。米国、欧州の一部諸国ではナオナチ的勢力の台頭が指摘されていますが、どの勢力も内向き。本家ヒットラーのナチズムとは違って復讐主義的、拡張主義的ではない点(その点では中国がそうかもしれませんが)安心できます。

そして選挙を前にした日本は時ならぬ経済過熱。「アベノミクスは失敗」というのが相場になっているから誰も言わないのですが、日本の景気は上上、株価は20年ぶりの高値、タクシーはつかまりにくく、スーパーのレジは行列、そして東京の道路にはまるで30年前のような渋滞が復活しています。その背景には輸出が好調であることがあるでしょうが、総選挙を意識しての、政権による人為的な演出もあるでしょう。日本銀行や年金基金による株の買い支えが増えているのでしょうし、おそらく公共投資等の財政支出も前倒しで行われているのでしょう。選挙前、道路工事が急増していたことは、その証左と言えます。

しかし北朝鮮の核ミサイル問題はもちろんのこと、日本経済の先行きを懸念させるようなことも、(いつもと同じく)起きています。電通社員の過労死事件をきっかけに起きている「勤務条件改善」の動きは非常に良いことだと思いますが、こういうキャンペーンではいつも起こる行き過ぎが目立っています。残業を制限したことで注文をさばききれなくなった企業へは注文が行かなくなり、競争相手に仕事が流れています。

戦後の日本経済は技術と製品の質で勝ったのだというようなことが言われますが、実際には超過勤務(要するに実質的な低賃金)で生産性を上げていた面が大きく、これを過度に制限すれば、日本企業は競争力を失って経営が立ち行かなくなります。さりとて、勤務条件は改善しなければいけないので、それは、残業できる人員とできない人員、ポストをきちんと分けて、一律に残業を制限するのは避けると同時に、組織内の不要な仕事をなくすような合理化によって実現しないといけません。例えば、幹部の自立能力を高めて、会議での彼らの発言メモを事前に書くような馬鹿げた仕事から社員を解放、さらに単純作業の機械化、外注を進めるなどです。

また神戸製鋼所が規格外の製品を納入して来ていたり、日産が無資格の検査要員を使ってきたことが問題になっていますが、これもこれまで実際上の問題が起きていないのは不思議なこと、過剰品質を求めたり、企業が独自に行うべき製品検査に政府が資格を設定したりするところに問題があるのかもしれません。

後者のように、あまりすべてのことを政府に期待し、政府の定める通りにやらない者を悪者呼ばわりするのは、経済の活力を奪うものです。政府の言うことを聞いてにっちもさっちも行かなくなった東芝、あるいはNTTの方ばかり見ていてコケた日本の携帯電話産業のような例もあるわけで、これではロシアや中国の企業の国営体質を嗤うことはできなくなります。

今回の総選挙では本当に不毛な選択を強いられました。ロシアでも選挙は一般に不毛ですが、9月10日モスクワ市の区議会選挙では、自由民主主義を唱える若手が多数、草の根選挙を繰り広げました。彼らはSNSを多用、Political UBERと称してボランティア活動を組織したようです。面白いと思います。例えば「どこそこでのポスター貼りのボランティア」などをFacebookで組織してしまうわけです。もちろん結果をチェックする人員も手配しておかないと、敵陣営にポスターを持ち逃げ棄却されるようなことが起こりますが。

総選挙後の外交はどうしたらいいのでしょう? 既に選挙前から国際情勢の先行きはますます混迷の度を深めるとともに(その主因は米国の相対的地位が落ちるとともに、方針が一定していないところにあります)、安倍外交も行き詰まりの度を強めていたのですが、ここでちょっと巻き直しをしたらいいと思います。日米、日欧の間の連絡・連携をリセットするのはもちろん、日中、日韓関係も上向きに運営していったらいいと思います。そして日本とASEAN諸国、インドとの関係にも理念と論理を持ち込む。
こうしたことをやって日本の国際的立場を全般的に底上げしてこそ、日ロ関係も少しは前に進むというものです。

そのあたり、31日発行の日本版NEWSWEEKに書く予定ですので、是非ごらんください。

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