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世界はこう変わる

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2017年10月14日

ビットコイン狂騒曲

(これは、9月27日発行したメルマガ「文明の万華鏡」第65号所載の記事の一部です。
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ビットコインと言えば、その元のテクノロジーであるところのブロックチェーン(すべての金融取引を記録して定期的にストックして、改ざんができないようにする)は日本人のサトシ・ナカモト氏によって開発されたことになっているのだが(税務署から隠れるためか、顔を見せたことがない。また書いた英語がちゃんとしているから日本人ではないだろうという、悲しき推測も行われている)、これは米国覇権を憎む中国、ロシアなどが、ドルに代わり得るものとしてこれまで囃してきたものだ。特に、この1年程、外国との資本取引を制限されるようになった中国人がビットコインを多用、更に投機資金も加わって、ビットコインの値段を2倍に釣り上げ、さらに投機のためにもっと使いやすい新手のビットコイン・キャッシュを開発して、「分家」までしてしまった。そして、自分で開発した新たなビットコインを「上場」しては、膨大な創業者利益を得る者が続出するに及んで、中国政府は9月中旬、遂にビットコインの使用を厳しく規制する措置に出た。

中国では周知のように、商店での支払いでも何でも、スマホをかざせばできるようになり、元紙幣の使用は少なくなっている。つまり通貨はデジタル化しているので、様々なビットコインがはびこる土壌が豊かなのだ。それは、元という通貨をマイナーな存在に追いやってしまいかねない。

デジタル・マネーやブロックチェーンは、全国民の取引を中銀が一手に把握、管理することを可能にする潜在能力も持っているが、今のところ通貨が限りなく民営化されて何が何だかわからなくなり、政府が「金融政策」というものを取れなくする危険性の方が目につくようになった。中国政府も、この危険性にやっと気が付いたのだろう。

それはロシアでも同じ傾向にある。ロシアの中銀は、ブロックチェーンが例えばマフィアのマネロンとか、不正取引を把握できるとして、活用を研究し始めていたのだが、8日付のForbesによると、ナビウリナ中銀総裁は、デジタル・マネーがルーブルに代わって取引に利用されることは、中銀の通貨政策を害する可能性がある、と発言している。

ブロックチェーンの活用の仕方を研究しているのは、日本、西側先進国の中銀も同じである。これは、国民が中銀に口座を開くようにして、全ての取引をここを通じて行わせ、全てを中銀が把握して、マネロンも防ぎ、課税も代行、通貨の発行量も自由自在に調節できることを意味する。こうなると商業銀行には、信託、貸付以外のビジネスがなくなってくるだろう

何度も言うように、これとは逆に、ブロックチェーン的なアプローチを使って、国家というものを溶融させてしまうことも可能である。5月25日の日経は、オランダに本部を置く「ビットネーション」というNPOがあって、ここはIT技術の活用で有名なエストニア政府と組んで、婚姻届、出生届、契約書などをブロックチェーンの手法で管理、電子公証を行っていると報じている。これは金融取引のブロックチェーンとは違った、ただのクラウド役所みたいなもので、日本の市役所でもやっていることだが、国家溶融の方向での一つの行き方であるのは間違いない。

まあ、筆者のような年長者にとってみれば、現金とクレジット・カードとインターネット・バンキングでもう十分。この上難しいことをやらせないでほしい、というのが実感だ。

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