核保有国=北朝鮮を前提とした政治地図
(これは、6月27日発行したメルマガ「文明の万華鏡」第62号の一部です。昨日、北朝鮮はICBMの発射に成功しました)
北朝鮮は、米国まで届く核ミサイルの開発にあと少しで成功するようだ。米軍は空母2隻も派遣して威嚇したが、おそらく韓国政府はソウルを北朝鮮に報復攻撃されることを恐れて、北朝鮮への武力行動を取らないよう、米国に申し入れたのだろう。
韓国の文在寅・新政権は、対北朝鮮防衛のため(と称して)米軍が持ち込みつつあったTHAAD(高高度迎撃ミサイル)の配備増強にストップをかけ、米軍は振り上げた拳のやり場に困っている。28日にはハワイ沖で再び韓国海軍及び海上自衛隊との共同軍事演習を予定しているが、28日の米韓首脳会談(まさに今日だ)の結果、トランプが韓国新政権の言い分に対してキレるかもしれない。
いずれにしても今回の騒ぎで、米国は北朝鮮に武力行使をできないことが明白になってしまった。そして米国は、自国の領土に達する核ミサイルを北朝鮮が開発するのを止めることでは、中国の協力に依存することになってしまった。中国は、この件を米国との取引の一つの具にすることができる。
米国は中国、北朝鮮、そして韓国によって、朝鮮半島から押し出されつつある。韓国の文政権は、大丈夫、北朝鮮は懐柔できる、その方が対立するよりいいのだと思っているようだが、ふと見ればこれまで脇にいてくれた米軍はおらず、北朝鮮、中国に一人で対峙している構図を発見することになる。ソウルを人質に取られているため、韓国は北朝鮮の理不尽な要求に抵抗できまい。おそらく11世紀、経済力では頂点を極めた中国の宋王朝が、莫大な貢物を北方の遊牧民族国家の金に強いられていたのと同じ構図が出現するだろう。
核を保有し、韓国の経済力を利用できる北朝鮮。朝鮮半島がこのようになってしまったら、日本はどうすればいいか? その時は、北朝鮮にとっての最大の脅威は中国になっているだろうことに着目するべきだ。北朝鮮のある場所に昔あった高句麗王朝は、隋、そして唐王朝によって滅ぼされている。中国の学界は今でも、高句麗は中国の一部だったと主張しているのである。つまり日本は米国との同盟を抑止力として用いつつ中国とのバランスをはかり、核保有国=北朝鮮とはその対中恐怖につけこんで友好関係を築くのである。
こうしたことは、戦後米国を正義の代表と見なし、北朝鮮のような国を奇異な挑戦国として見ることに慣れてしまった日本の有識層には、奇想天外な考え方に思えるかもしれない。しかしトランプという予測不能な大統領が現れ、任期の間に世界を不可逆的に変えてしまうかもしれない今、これまでの常識はよく検証して、修正していかねば、日本はやっていけない。
日本のメディアは慰安婦問題合意再検討の動きにばかり気を奪われているが、韓国との関係は二国間だけの論理で処理するのではなく、上記のような韓国のこれからの国際的立場を勘案、トランプではないが、日本も「取引」をする気持ちにならないといけないだろう。
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