EUは対ロ制裁をなしくずし的に緩和
(これは先月のメルマガ「文明の万華鏡」の一部です)
ISISが世界の関心を独占しているために、ロシアのクリミア併合とか東ウクライナの情勢のことは忘れ去られてしまった。今やISISを掃討するための米ロ欧「連合軍」ができても不思議でない。
他方、EUとロシアはそうなる前からウクライナ絡みの制裁措置をくぐる新手の措置を発明しつつあった。それが以下の一文である。
――EUは、黙って自分の利益をちゃっかり推進している。EUは対ロ制裁を表向きは維持しつつも、その「解釈を柔軟化」(集団的自衛権にからむ日本の憲法論議に類似して苦笑を禁じ得ない)させることで、制裁をなしくずし的に緩和させつつあるのだ。
9月初旬、ドイツのガス会社Wintershallはガスプロムとの間で、ロシアのウレンゴイ天然ガス田とドイツのガス配管インフラを「資産交換」、これによってガスプロムに実質的融資を行えるようになった。またEU諸国のガス各社はロシアからドイツに至る天然ガス海底パイプライン「ノルト・ストレーム」の複線化のためコンソシアムを結成、ガスプロムに融資することなしに共同事業に乗り出す。
10月初旬には、ロシアのノリリスク・ニッケル社が70億ドル相当のユーロ債をEUの資本市場で完売したが、ロシア企業のユーロ債発行は昨年11月以来である。
米国の石油企業も、表立った動きは控えているが、ロシアが開く経済セミナーなどには幹部連中を送り込んでいる。日本もこれらに見合った「解釈の変更」をしておかないと、一国だけおいてけぼりになってロシアから集中攻撃を受ける破目になる。だからと言って、クリミアをロシアが武力で制圧しつつ併合したことには是正を求める姿勢をずっと保持していくのだが。
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