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世界はこう変わる

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2014年11月10日

セルビアの印象

10月下旬、セルビアの首都ベオグラードに4日ほど出張する機会があった。現地の大学院大学ECPD(European Center for Peace and Development)の名誉会長に指名されたので、ECPDの年次総会と国際シンポジウムに出席するためだった。もともと初代会長は、かの大来佐武郎氏なので、小生では座りが悪くてむずむずする心地だったが、無給だからなり手も少なかろうと思って、座っていた。

1988年-89年、東欧が激動する時代に外務省東欧課長を務めていたので、ベオグラードは何回か訪れたことがある。この地は歴史的・文化的には複雑で、セルビア人は7世紀頃、このあたりに南下してきたものと思われている。当初、東ローマ帝国、次いでオスマン・トルコの支配下に入ったので、キリスト教とイスラム教が入り乱れる。ベオグラードを流れるサーヴァ川は、イスラムとキリスト教の境目と言われているし、レストランで演奏した楽隊の楽器は、ペルシャ風の膨らんだマンドリン、胡弓風に縦に弾くバイオリン、ペルシャ風縦笛、それにロシア風民族衣装と、ごった煮のようになっていた。そして週末の夜、若者が騒ぐダンス・ホールでのポップ音楽はロシア風なのである。

1988年の当時、ユーゴスラビアはまだ今のように6の共和国とコソヴォに分裂しておらず、セルビアは地域の盟主として、リーダーシップを振るっていた。元々スラブ系の地でソ連との関係が強かったのだが、建国の祖チトーがスターリンの干渉を嫌い、ソ連圏とはつかず離れず、経済的利益だけは手に入れる政策を取っていた。外交では世界の「非同盟運動」の中心的存在となり、経済では計画経済と市場経済の中間のような体制を取っていたのである。だから、矜持はすごくて、対応には気を付ける必要があった。融資が欲しいというので、輸出入銀行の融資を斡旋したことがあるが、「いや、利子率の低い円借款が欲しいのだ」と言って、輸銀融資を断ってくるような国だった。

米国に対するわだかまり

今回は、それから約15年ぶりの訪問。ユーゴスラビアは分裂し、その中で北部のスロベニアとクロアチアは既にEUに加盟を認められている。この2つは昔からオスマン・トルコではなくオーストリア・ハンガリー帝国の一部だったので、EUの方も仲間意識が強いのだ(メンタリティーはEU的と言うよりは東欧的だが)。そしてユーゴスラビア分裂の過程でセルビアは、まるで小型のロシアであるかのようなトラウマを味わわされている。と言うのは、クロアチアやボスニア・ヘルツェゴビナ、コソヴォにいたセルビア人が現地民族(と言っても、同じスラブ系なのだが)と武力抗争に陥って多数の犠牲者を出した末、ボスニア・ヘルツェゴビナとコソヴォについてはNATO諸国が武力で介入してセルビアから強制的に引きはがした(NATO諸国にとっては、現地民族の権利保護であった)からである。

そのあたりをセルビアの識者は、「米国に、おまえの領土の20%はおまえのものでないと言われて、強制的に奪われたようなものだ」という言葉で表現していた。今は米国を表だって非難しにくいものだから、恨みは内攻している。

それに、この地域はブルガリアまで含めてスラブ系だから、ロシアへの親近感も強い。彼らは、米国こそが世界中の政府を倒し、紛争の種をまいていると思い込んでいる。ECPDの国際会議にはガリ元国連事務総長が挨拶を寄せたが、それは米国のNGOなどが世界中でレジーム・チェンジを仕組み、紛争を起こしていることへのチェック体制樹立の必要を指摘したもので、僕も驚いた。もっとも、彼は現役時代から国連の権限強化主義者のため、米国の反対で再選が成らなかった人物なので、米国のやり方を批判するのも理解できる。

会議に参加した米国人は、こうした雰囲気をあまり感じていない。自分の体制が一番なのだから、これをほかにも広めることが他国の利益になると本気で思いこんでいる。だが世界の諸国がこうした米国を許容しているのは、いわば警察と経済活動の胴本の役をやってくれているからだ。それが今のように米政権が麻痺してくると、儲かるのは胴元だけ、警察はやらなくなり、NGO等の民間団体はよけいな騒ぎばかり起こす、というように見えてしまう。このままいったら、どうなる?

「スポンサー」を求めての漂流

 自律的な成長力を欠く国々は、資本、あるいは助成金を提供してくれる「スポンサー」を求めてさまようものである。旧ユーゴスラビア諸国もその例外ではない。彼らはこれまでEUにすがりついてきたが、EUの盟主たるドイツの経済までも下向きになってきた今、浮足立っている気味がある。だからだろう、10月15日プーチン大統領がセルビアに来訪したのに合わせて、本来は20日の戦勝記念日を前倒しし、これまでやってこなかった軍事パレードまでしてみせたのである。
 ロシアの足場は強い。セルビアが分離独立の事実を承認していない(西側、日本は承認)コソヴォを国連に入れないようにしてくれているのは「同胞」ロシアなのである(中国も同様)。もっともロシアは経済面ではEUに大きく劣る。セルビアは2007ー13年、EUに326億ユーロを輸出したのに対して、ロシアへは42億ユーロのみに止まったし、EUからは92億ユーロの直接投資を受けている(ロシアからは25億ユーロのみ)。

それでもセルビアは、ウクライナがらみの対ロ制裁には加わっていないし、ロシアと自由貿易協定(2000年)を結んでいるおかげで、フィアット等が対ロ輸出のためにセルビアに工場を持っている。だが経済は下降、求心力をとみに欠いてきたEUに、譲歩を重ねてでも(例えば、コソヴォの分離独立を承認しろとEUは要求してくるだろう)加盟する価値があるのかどうか。そこに中国から習近平国家主席が400名の企業人を引き連れてやって来るというので、ベオグラードには静かな期待が漲っていた。中国語の通訳は、400名もいるのだろうか。

コメント

投稿者: qだだちゃん | 2015年2月18日 18:36

差別や区別は、己が感情の悪魔の間。

同じ地に生まれたのに、なぜ殺しあう。
必要なければ、神は決してだれそれを生み出さなかっただろう。

神には姿形は存在しない、結構、其れでよいのならば好きにすればよい。

汚れた母より生まれはムスリムの戦士よ、ムハマンドにも母は居たのだよ。
それを汚れていると言うのか、それともムハマンドは父から生まれたのか、きっと出てきた所はくさい場所なんだろうな。

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