上海協力機構首脳会議の成果
9月13日、タジキスタンの首都ドシャンベで、上海協力機構(SCO)首脳会議が開かれた。西側による制裁で孤立したロシアがどこまで中国にすり寄るかが見所だったが、すり寄るにはすり寄ったものの(習近平とは真っ先に個別の会談を行い、他の諸国との会談はおざなりにすませようとしたために、ウズベキスタンのカリモフ大統領などは会う時間が短すぎる(30分)として苦情を申し立てている)、首脳会議の成果自体は例によって実体を欠いていた。
「インドとパキスタンの加盟」が決まったかのように報道されているが、これはもう10年以上続いている問題だ。今回も、「来年ちゃんと決める」ということを合意しただけの話しなのである。
この問題をめぐる基本的な力学は、インドを入れたがっているのはロシアで、その目的はSCOを中国が牛耳るのを防ぐことにある、ということにある。中国は、国境問題やインド洋の安全保障問題で対抗関係にあるインドがSCOに入るのは嫌なので、自分の準同盟国パキスタンの加盟を推してきた。インドとパキスタンは準敵対関係にあるので、両国をSCOに入れるとSCOの協力が進まなくなる恐れがある、だからインドの加盟は認められない――そのような目論見が中国にあったようだ。
今回は、これまで決まっていなかった、新規加盟の手続きをちゃんと決めたということらしいが、その内容は発表されていない。次の首脳会議まで1年。その間紆余曲折して、インド・パキスタンの加盟問題は来年も宙ぶらりんということではないか。
その他、目ぼしい合意事項は見当たらない。これまで中国が執拗に提案し、ロシアが中国に主導権を取られるのを恐れてこれまた執拗につぶしてきたSCO開発銀行、あるいはSCO通貨基金設立は、今回会議後の声明で言及もされていない。中国としては、習近平主席がぶち上げた「アジア・インフラ投資銀行」の実現で手いっぱいというところなのだろう。
テロに対抗して「統合軍」を作る話も出たようだが、合意文書にはなっていない。当然「どの国が指揮をとるか」という問題が出てきて、中ロの間がまとまらないからである。結局、SCO首脳会議の直前、8月末に内蒙古で大規模共同演習「平和の使命―2014」を行い、これまでで最大規模の7000人が参加したことが、今回首脳会議をめぐる最大の動きではないか?
来年はロシアがSCO議長国となる。来年の首脳会議をめがけて、「2025年までのSCO発展戦略」を作ることが今回合意されている。あとはSCOのロゴ・マークを作ることが合意されていて、これは国際入札にでもかけられるのだろうか。目に見える成果になる。
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