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2014年9月 9日

国際経営断片   トップダウンかボトムアップか

日本の企業が外国の企業と大きく違う点が一つある。それはボトムアップ、つまり上司を祭り上げて外回りばかりやらせる一方で、現場のマーケティングや生産・販売戦略の策定は課長級の中堅幹部が中心になってやる、作った戦略や計画は関係する部課の了承を取った上で取締役会に上げて正式決定とする、下から上へ決定案が上がっていくので、ボトムアップと言うのである。これは、役所でも同じである。

日本の組織は終身雇用を基本に回っているため、中堅幹部レベルに情報や経験、そして人脈が蓄積されている。だからボトムアップが可能になる
ので、外国の企業ではこうはいかない。部下に情報や人脈を下手に持たせれば、次の日にはそれを根こそぎ持ってライバル企業に転職してしまうかもしれないからだ。従って外国の企業では社長がリーダーシップを握るところが多い。社長が数人の側近達と情報、人脈を独占し、戦略を建て、下部に指令を出す――トップダウンなのである。

一般にロシア、中国、中央アジアのような社会主義国では、トップダウンの傾向が強い。それに対して欧米、その他の国の組織のタイプは様々で、それぞれトップダウンかボトムアップなのか、それともフラットなのか、見極めないといけない。

ボトムアップの組織における意思決定は、時間がかかる。下の方からじっくり組織全体のコンセンサスを練り上げていくからだ。しかしいったん正式に決定が成されると、関係部課は自分も賛成したことなので、実行が素早く確実になる。日本の企業や役所は一般にこのような美点を持っているのだが、外国人にはこれでむしろ嫌われることも多い。たとえば、ロシアにおける日本企業への一般的な評価は、「日本企業は話しかけても反応がない。メールを打っても返事がない。日本人が商談を決めるのを待っていたら、こちらは干上がってしまう。面倒だから、日本の企業とは関わりたくない。そこにいくと、中国の企業は、その企業のホームページに英語で引き合いを寄せると、すぐ英語で返事が返ってくる。『良かったら、明日にでもモスクワに見積もりのため参上します』と。こうだぜ」というものである。

逆にトップダウンの企業、たとえばアメリカの企業はその投資先にとってみると、「投資の決定も素早いが、投資から撤退する決定もまた速い。自分の利益のことばかり考えていて、好きになれない」ということになる。しかもトップダウンの組織では、社長が何かを勝手に決めても、社内の事前調整をしていなければ、やれ資金は足りない、やれ部品が足りない、やれ技術が整っていないということになって、実行が進まないこともある。

トップダウンが普通の国では、良い人材はなかなか見つからない。多くの者は仕事の全体像も知らされずに、上からの指示をただこなすだけ、というやり方に慣れているので、自分で情報を集め、自分で戦略を練って顧客を開拓する、というようなことをしない。ために自分で動く者がいるなと思うと、日本人の上司には相談もせず、報告もせず、ただ自分の雇主の企業の名前で、どうしようもない案件を合意してきたりする。自分でもイニシャティブを取りながら、社内での連絡・調整も欠かさないという、バランスの取れた仕事ができる人材は本当に稀である。
トップダウンとボトムアップ。終身雇用と頻繁な転職。そのいずれにも長短があるので、うまく組み合わせて使わなければいけない、ということなのである。

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