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世界はこう変わる

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2014年4月19日

ウクライナ問題を活用した積極外交を

 (www.nippon.comに投稿したものから抜粋。
全文はhttp://www.nippon.com/ja/currents/d00119/#page_topをご覧ください)


ウクライナは米ロ角逐の天王山

「ソ連」という帝国が崩壊したのは約20年前だが、ロシアの周縁諸国はいまだに不安定性を抱えており、今はウクライナ情勢が荒れている。これはロシアの後退を確定的なものとするか、それともプーチンのもくろむソ連復活を助けるものとなるか、天王山ともいえる事件なのである。

4月23日からオバマ大統領が来日することになる。日本はウクライナについて、どのように対処するべきか。

日ロ関係の停滞はやむを得ない

中国と切り結ぶので頭が一杯の日本にしてみれば、ウクライナに米国の関心を取られる上に、中国けん制のために強化してきたロシアとの関係まで後退させなければならないのは、有り難くない話である。しかしこうなってしまった以上、日本は西側の一員として対処する以外に道はない。日ロ関係は停滞せざるを得ない。この1年間多大な努力で築いてきた安倍晋三首相・プーチン大統領間の「萌え」関係も、しばらく冷蔵庫入りだ。

西側から制裁を受けたロシアは孤立して(中国も米国とロシアの間で二股をかけている)、実際には日本に対して弱い立場に置かれるのだが、軍用機による日本領空侵犯を増やすなどして日本を威嚇してくるだろう。その裏では北方領土問題解決の餌を見せ、日本を引き寄せようとするだろうが。今秋に予定されているプーチン来日は、このような虚々実々の取引の中で決まっていくものなので、今から実行、延期のいずれかを決めることなく、むしろ日本のカードとしてとっておけばよいーーーーーーーーーー。

有効な制裁は石油・天然ガスの暴落

結局、一番抵抗が少なく、かつロシアに対しても有効な制裁措置は、世界の石油・天然ガス価格の暴落を演出することであろう。1991年のソ連崩壊も、その引き金は1985年のサウジアラビアによる原油大増産の決定と価格の3分の1への大暴落なのである。現在1バレル110ドル程度の原油価格が、米国のシェールオイル生産を阻害しない80ドル程度に下がっただけで、ロシア財政は大きく逼迫(ひっぱく)し、ルーブルは下落し、インフレも亢進(こうしん)して社会は不安定化するだろう。イランと対立し、そのからみでシリアのアサド政権転覆をめざすサウジアラビアにとっては、アサド大統領を助けるロシアを窮地に追い込む絶好の機会ともなる。またイランのシーア派が勢力を伸長するイラクにおいて、北方の産油地域のクルド族が「住民投票」をして独立し、原油の大増産を図るというシナリオも十分可能であるーーーーーーーーーーーー。


日米欧による「新マーシャル・プラン」提案も

4月23日のオバマ来日までもう時間はほとんどない。オバマ大統領との日米首脳会談では、ウクライナについては、国際通貨基金(IMF)が先頭に立つ金融支援に日本も本格的に加わる姿勢を明らかにしておけば十分であり、対ロ制裁措置については問題意識を米国と共有することを明らかにした上で、具体的措置はG7内部の調整に待つという姿勢でいいだろう。

日本にとっては、ウクライナ情勢に直接的な関与度を高めるより、東アジア地域の繁栄と安定維持における日米の役割・負担の分担割合を定める方がはるかに重要な問題であり、それによって日米関係がより緊密化することで、ひいてはウクライナ問題における西側の立場を強化することになるだろう。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)もその文脈で語ることができるのである。

現在の世界の課題は、イラク戦争とリーマン危機を乗り切った米国がまだ回復途上にあり、対外介入を避けている時期に、世界の安定をどのように保持していくかにある。米国はこれまでその非政府組織(NGO)を先頭に、旧ソ連・中東諸国などでの「民主化」運動を支援することで勢力の維持を図ってきたが、それは今回のウクライナや「アラブの春」に見られるように、混乱を生むだけでなく、米国に対する失望感と警戒感も生んでいる。世界を安定させるには、やはり産業振興による中産階級の創出と、それを基盤とした民主主義の醸成を図ることが王道なのであり、その方向で「新マーシャル・プラン」的なものを日米欧が打ち出し、BRICsもドナーとして含めればーーーーーーーーーー。

今回のオバマ来日の際には、現行の国際秩序を力によって変更しようとする試みに日米は反対するという趣旨を両国で声明すれば、それはウクライナへのロシアの介入、尖閣・南シナ海での中国の一方的な行動、そして「日本は戦後の合意をくつがえそうとしている」という中国の奇妙な対米キャンペーンを封じ込めるとともに、安倍政権は戦後秩序に挑戦しようとしているという、米国の一部に見られる誤解を正すものにもなるだろう。

ウクライナのような国際問題は、これまでのようにただ受け身で対処を考えるより、この機会をむしろ活用して日本の立場を向上させることを考えていくべきである。

コメント

投稿者: noutori | 2014年4月27日 21:14

その通りですね。かかる事態に面すると板挟みの日本外交というのがマスコミの定番ですが少し見方を変えれば両天秤の外交でもあるわけで外務省もこのような報道ぶりに甘んじることなく徐々にでも変えていくべきですね。ところでオバマの尖閣、冷戦の枠と中国は言っていましたがこれはWW2後の枠。その中で中国は戦勝国で安保理の常任もとったのでは?詭弁にはMFAは何もしないのですかね?

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