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世界はこう変わる

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2013年4月 6日

世界は新たな冷戦へ?

以前から言われていることだが、最近になってロシア、中国を筆頭とする「国家資本主義」(政府、党が国営企業の経営を直接手掛ける。企業経営は行政の一環となる)と自由市場経済の先進諸国との間の対立がますます悪性になってきた気がしている。ロシアや中国はWTOなど、世界経済体制の中にまだ入っているので、早まったことは言えないのだが、どうも「新冷戦」とも言える情勢がこれから強くなっていくのでないか?

なぜそんなことを言うかというと、一度経済を国有化して利権を党・政府官僚の手に集中させた国々は、「死のキス」を受けたと同じ、毒が体にまわって活力を失ってしまうからだ。

国営企業の民営化は難しい。儲かっている国営企業は、政府が手放したくない。赤字の国営企業はなかなか売れない。国営企業は地方都市の福祉を支え、年金を支える。地方の知事の成績は、地元国営企業の業績ではかられるーーそういった事情があるからだ。

リーマン・ショックで、西側の「自由市場経済」(完全に自由な市場経済などどこにもないが、少なくとも行政と企業経営は切り離されている)がもう5年も不振なので、国家資本主義諸国がますます自分の体制(つまり利権構造だ)を正当化する口実を与えている。

そしてロシアも中国も、軍拡に権力基盤を依存している。ロシアでは軍需大企業が地方の都市全体の経済を支えていることも珍しくなく、軍と合わせて大票田になっている。ロシアの兵器の技術水準を批判して外国兵器を輸入しようとしたセルジュコフ国防相は、汚職を摘発され更迭される始末である。

習近平国家主席はどうかと言うと、もともと「太子党」に近いと言われるのに、薄熙来摘発を進めたことでその支持を減らし、その分人民解放軍を力の支えにしていると指摘されている。

この二つのベクトルが合わさって「新冷戦」的状況が生起するのではないか――これはまだ仮説。冷戦時代も中ソの関係は悪くなったが、だからと言って冷戦はなくならなかった。

ただ、「新冷戦」が起きた場合、日本は冷戦時代よりはるかに深刻な軍事的環境に置かれるだろう。冷戦時代より数倍大きくなった中国が隣にいるからだ。いわば、冷戦時代、強大なソ連にほぼ隣接していた西独と似た立場に置かれることになる。

当時、僕はボンに勤務していたが、ソ連軍はその気になったら10日ほどで全欧州を制圧できると言われていたものだ。だから西独は領内に米国の核弾頭を置かせ、ソ連軍が大挙して攻めて来たら、その鼻先で小型核爆弾を破裂させるつもりだったのだ(戦術核兵器)。

海に囲まれた日本は、当時の西独とは違う軍事環境に置かれている。しかし、西独が当時ソ連に対して行った緊張緩和外交などを中国に対して行う破目になるだろう。冷戦時代と西独の外交を記憶の引き出しから引きずり出して、埃をはらっておく時代が来た。

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