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世界はこう変わる

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2013年1月 8日

世界の富はまだ欧米、そして日本がおさえている

世界中、「中国経済の台頭」一辺倒だが、「古い世界」であるところの西欧、米国、そして日本が有する富の量は相変わらず、中国を凌いでいる

アメリカもヨーロッパも日本も、莫大な資本を既に築いていることが強みだ。農業、そして農産物の流通が経済の中心だった中世までは、資本はそれほど増殖しなかった。農業生産の成長力には限度があったからである。しかし産業革命で富を無限に(と言っても、買う者がいる限りの話しだが)増やすことができるようになってからは、欧米、そして日本の資本は膨らむ一方だ。

先行した者の利得で、儲かる分野は彼らが抑えてしまっている。「資本」の量をどう測るかは難しい問題だが、一つの指標として対外直接投資を見てみると、二〇〇七年世界で行われた対外直接投資合計約二・一兆ドルのうち実に約七五%は先進諸国によって行われている 。そして、先進国は相互に緊密な投資関係で結ばれている。米国の対中直接投資残高は二〇一〇年末で六〇〇億ドル強で、全海外に対する直接投資残高の僅か一・五%に過ぎない。欧州での残高は全体の五五・九%に達している。

つまり、世界経済では先行して先進国化した国々が相変わらず大きな比重を保持している。確かに二〇〇〇年以降をとってみても、日米欧から中国に移転した富は大変な額にのぼっている。二〇〇二年~二〇一一年に中国がため込んだ外貨は、貿易黒字を足したものが約二兆ドル(香港の分を除いて)、外国からの直接投資累積額が約一兆ドル、計三兆ドルであり、毎年平均二五兆円ほど、GDPの五%強相当のシード・マネーが中国に流れ込んだことになる。これを、不動産投資、建設投資で膨らませてきたのが、中国の成長モデルである。

ところが今でも、中国の輸出の五〇%程度は、日米欧企業が中国に作った工場から出荷されているものだし、中国人の賃金が急上昇しているために、中国でモノを作って先進国へ輸出するという、これまでの成長モデルは成り立たなくなりつつある。それどころか、中国の国内市場でモノを売る場合にも、中国国内で生産するより海外から輸入した方が安くなる時代が来るに違いない。つまり、日米欧から中国への富の流出のテンポは鈍っており、日米欧は中国の成長に対してそれほど浮足立つ必要はないということだ。

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