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世界はこう変わる

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2012年4月19日

薄熙来事件は現代中国政治経済の曲がり角になるか

重慶の薄熙来事件は、彼の右腕の公安局長が米国総領事館に逃げ込んだり、彼の夫人のコンサルタントで、007というナンバーをつけた車を乗り回していた英国人が毒殺されたりとかで、まるで水滸伝を地でいくような話だ。薄熙来は昨年、毛沢東時代の革命歌を歌う運動を地元で繰り広げ、その勢いで1000名もの合唱団を引き連れて北京に乗り込んだが、幹部は誰も聞きに来なかったということのようで、この秋の党大会を控えての野心は見え見えだ。

その彼がつまずいて、職務を停止された上、今どこにいるかもわからない。そして英語に堪能で弁護士事務所を開いていた夫人は、殺人容疑でつかまっていると報道されている。おどろおどろしい話だ。これに比べれば、日本の政治家はみな聖人に見える。

共産党指導部が抱え込んだ問題は、深く大きい。鄧小平死去以降心配されてきた、指導部が団結を維持できるかどうか、内紛が表面化しないかどうか、という問題がついに火を噴こうとしている。薄熙来を厳しく処罰すれば太子党と呼ばれる利権派が黙っておらず、さりとてうやむやにすれば共青団出身者を中心とする正統派が抗議するだろう。習近平でまとまろうとしていた次期総書記人事も、また宙にうきかねない。トップの人事が宙に浮けば、地方も含めて中国全土の党幹部は浮足立つ。
(4月20日、少し追加すると、要するに権力闘争に公安局とか検察局を巻き込むと、闘争は非常に深刻なものとなり、相手を物理的に抹殺する仁義なき戦いにまで至る可能性があるということ)

こうして政治が浮足立つとするならば、経済が受ける打撃もまた大きいだろう。薄熙来事件が如実に示していることは、中国経済が日本とは全く違う論理で動いている、ということである。つまり党や政府の力が強すぎるために、トップが失脚しただけで人口約3000万の重慶とその周辺の投資案件が失速する、ということであるならば、中国の発展も足腰が弱いということである。

中国は1993年以来、外資の大量の流入、貿易黒字による資金の大量の流入があり、その資金を不動産、建設業に回して何倍にも膨らませてきた。その規模が巨大であったために、中国の社会、経済が抱えている問題は押し流され、奇跡の発展ばかりが目立ってきたのだが、薄熙来事件はその流れを変えてしまうかもしれない。

既に昨年から資本の海外流出が目立ち始めている。公的な統計ではその量はまださしたるものではないが、裏の手も使って高官たちが裏金を海外に大挙送金し始めれば、ちょっとした見ものになるだろう。

中国経済の成長を囃し立ててその株価を吊り上げ(日本経済を実際以上におとしめ、株価を下げさせては)、そこで儲けてきた欧米の投資銀行も、中国の株を手放し始めている。中国経済から血液が抜き取られ始めている。胡錦濤総書記は、その任期も末になって、最大の試練に見舞われている。もしかすると、党大会は延期されるか、胡錦濤が居座るか、という事態があり得るのではないか?

なお、人事をめぐって派閥が相争い始めると、「日本に対して弱腰」という悪口を相互に浴びせ始めるかもしれない。その挙句、尖閣諸島に軍艦出動ということになっても不思議はない。ただ軍司令官も、北京での派閥争いの成り行きを横目で見ながらやらないと、あとで処罰の対象となることもまた十分あり得る。


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