MK three Politico-militaryな世界情勢 第5号
MKⅢ Politico-militaryな世界情勢
第5号
2018年6月周辺
(2018年6月30日)
これは、「安全保障研究ギルド "MKⅢ"(MK3を改名)」による定期的なニュースレターです。MKⅢのメンバーは次の4名。米国、中国、ロシア、欧州の専門家から成っています。この号はメンバー間の情報交換に基づいており、だいたい1月から6月をカバーしています。
(同人名:あいうえお順)
河東哲夫 Japan World Trends代表(欧州及び総括)
小泉悠 未来工学研究所特別研究員(ロシア及び周辺)
近藤大介 講談社週刊現代特別編集委員(中国、朝鮮半島)
村野将 岡崎研究所研究員(米国)
ギルド発足に当たって:
冷戦終結以降、日本が世界を自分の目で見て、自分で生き方を決める必要性が益々増大している。そして世界は政治・経済・社会等、複眼的に分析するべきものだが、日本ではそのうち軍事的視点が特に弱い気味があった。安全保障を日米安保に大きく依存し、安保政策と言えば基地対策であった時代が長かったからである。
その弱点を補うべく、上記4名の同人がこの「Politico-militaryな世界情勢」を随時発行することとした。MKⅢ(エムケースリー)とは、以下の同人の頭文字を取ったもので、いずれからも補助金、助成金の類を受けていない任意団体である。 (2017年2月)
目次
1. 米国覇権の中で米国の取り分増へ
2.中国
3.ロシア
4.北朝鮮の非核化
5.日本の動き
1)朝鮮国連軍はアジア版NATOになるか
2)垂直離着陸のF35Bで日本も空母保有?
3)イージス・アショアをめぐる議論
4)米国以外からの兵器購入
6.その他の話題
1)トランプはレジーム・チェンジを放棄へ
2)イラン核合意からの米脱退⇒原油価格上昇はロシアを利する
3)シベリア石油をめぐる奇奇怪怪――日本の取り分はどうなる?
4)イラクへの兵器輸出を強化するロシア
5)黒海でのロシア海軍優位・NATOの対応
6)ロシア軍、シリアの基地を強化
7)ベトナム沖の資源開発で中ロの鞘当て
8)「ユーラシア」での覇権争い
9)カスピ海波高し
10)中央アジア、独自色を強化
11)麻薬ルートが変われば政治が変わる
12)イスラエルはイラン核施設を攻撃するか
13)フランス、スウェーデンでの「徴兵制復活」
14)米国第2艦隊蘇る
冒頭言
世界のトレンドは、12月の第4号で示したものと変わらない。ここに主要点だけ抜粋して置く。なお米ロ首脳会談が7月中旬に行われようが、これは6月の米朝首脳会談を大型にしたようなもので、米中間選挙に向けて「ロシア=悪とトランプは共謀している」との民主党のnarrativeを崩すことに主眼が置かれよう。制裁は解除されまいし、ウクライナ、シリア等についても大きな進展は狙わないだろう。以下、特に断りのない部分は河東文責。
1. 米国覇権の中で米国の取り分増へ( 4)は村野筆)
1)パックス・アメリカーナを支えてきた基本的道具立ては安泰。それは米国の軍事力、市場の大きさ、そして世界の貿易の決済の大半がドルで行われていること等による。
2)トランプはその力を基盤に、パックス・アメリカーナの中での利益の再分配(米国に有利なように)に乗り出している。その途上、米国が自由貿易の原則から離脱したり、同盟関係をないがしろにしたりするように見える時もある。それが後戻り不可能な地点にまで至ることが心配され始めている。
3)海外では自由・民主主義を旗印に他国のレジーム・チェンジをしかけるやり方を、明示的に放棄。これは、海外で不要の紛争を生まないので評価できるが、自由・民主主義の価値観を重視せず、同盟諸国との関係をないがしろにする傾向は危険である。
4)トランプは軍事力を強化する方向を見せている。トランプ色濃厚となる来年度予算については、2月に議会に示された大統領予算教書では国防費が13%増を見込んでいる。議会の審議過程でその内容は多少変化するだろうが、国防費増額の方向は変わるまい。
これを見ればトランプは、世界の安定と米国の指導的地位を、圧倒的な軍事力で維持しようとしているように見える。ただ、トランプは海外での軍事行動を冗費と見る傾向がある。トランプ政権が重視しているのは核戦力の近代化、米本土防衛用ミサイル防衛、海軍艦艇の増強、先端技術開発などだが、戦力を強化しておきながら、海外への防衛コミットメントを軽減したいというトランプ・ドクトリンは、前方展開戦力の重視を改めて謳っている国家防衛戦略(NDS2018)とは相容れない側面もあり、国防当局の専門家らはNDSの内容をどのように具体的な政策に繋げるか四苦八苦している。トランプは、面倒な地域の紛争の解決は、その地域の諸国に丸投げする傾向を持つ。中東ではイスラエルの要求(イラン核合意からの脱退。エルサレムへの大使館移転)を満額で認めた後、シリア等で如何なる方向に出るか注目される。
5)トランプは国務省・国防省幹部の多くを任命もせず、ツイッターでの勝手な発信、北朝鮮との首脳会談への衝動的な同意など、首脳主導の外交の新しいスタイルを確立しつつあるように見える。しかし北朝鮮との首脳会談にしても、事務レベルが準備会談をしており、首脳レベルで細部を決められるはずもない。国務省は次官補クラスが大量に不在で麻痺していると報道されているが、実際は次官補代理、あるいはその下のレベルが事務を動かしており、士気は特に落ちていない由。
6)米ロ関係は、4月にも米国が追加制裁を発表し、悪くなる一方だが、ロシアは反発を抑制し、7月16日の首脳会談にこぎつけようとしている。これは、北朝鮮との首脳会談が米国内で概ね評価されていることに気を良くしたトランプが、ロシアを相手に柳の下のドジョウを狙っているのであろう。具体的な成果に乏しくとも、緊張を緩和しただけで、トランプ支持層は喝采するらしい。昨年7月米議会は、大統領が対ロ制裁を一存で撤廃することを禁じ、議会に事前承認を得ることを義務付けた法律を採択している。従って、制裁緩和、あるいはシリア、ウクライナ情勢についても、思い切った合意はできないであろう。
7)と同時に、経済面では両国間のきずなは切れていないことを認識しないといけない。両国間貿易はもともと少ないが、少ないなりにも昨年は12.5%の伸びを見せている。5月末サンクト・ペテルブルクの国際経済フォーラムでも、米大使館は「特に参加を止めない」とのメッセージを出して、米企業が多数参加している。米国は原子力発電に電力の約20%%を依存しているが、濃縮ウランの20%程度をロシアから輸入している。
2.中国( 1)、2)及び5)は近藤筆)
1)習近平総書記をハブとして、諸分野の権力が集中されつつある。軍はもちろん、これまで政府(国務院の公安省)に服属していた武装警察(国内治安維持用)が1月から中央軍事委員会の指導下に入ることとなった。日本の海上保安庁に相当する中国公安辺防海警部隊(中国海警)が武装警察に服属することとされて、これも中央軍事委員会隷下に入ること、そして、経済政策の権限を李克強首相から実質的に取り上げた中央財経領導小組は今年3月の全人代で委員会に昇格して、法的基盤を持つ恒常的な機関となった。さらに人民日報、中央電視台など党・政府メディアは、党中央宣伝部の管轄下に置かれて、習近平個人崇拝的色彩を強化しつつある。知識層の間では静かな懸念と反発が蓄積されつつあったが、昨今のアメリカとの貿易摩擦で、習近平体制の求心力は高まりつつある。
2)過度の権力集中が経済にどういった影響を与えていくのかが注目される。例えば習近平政権は供給側構造性改革を推進しているが、輸出に頼る経済構造が露呈している。北京では昨年秋から今年3月中旬まで、すべての工事や自宅の内装まで禁止された。
また中国の企業家は、技術の遅れを短期に克服するため、「なければ買えばいい」と安易に考えて、外国企業のM&Aに走っているが、これは海外で反発、警戒を引き起こしている。
3)トランプが発信する強硬な貿易制限措置については、同等の報復措置を取ることを即座に発表するとともに、米国産大豆の輸入を制限する等、米国への揺さぶりをかけている。しかし、成長マネーを対米貿易黒字から得てきた中国は基本的に弱い立場にある。本年に入り中国経済は投資、消費とも停滞傾向を強めている中、輸出までが米国の措置で減少すると、これまで右肩上がりで回ってきた中国経済が、融資焦げ付きが相次いでスパイラル的縮小に陥る可能性が出てくる。なお、「貿易戦争」においては、習近平がトランプを批判するような発言を避けているのが目につく。
4)9-10日青島で行われた上海協力機構首脳会議(SCO)は、インド、パキスタンが正式参加し、イランがオブザーバーとして参加したが、中国による大型支援パッケージの発表もなく、金正恩委員長との会談で北朝鮮に手を突っ込んできた米トランプ政権への中ロによる対抗の色合いが強かった。
5)以上をまとめると、習近平は国内の権力を集中化させたのはいいが、対外政策ではトランプの出方があまりに厳しいために戸惑っている節がある。南シナ海では米艦船だけでなくフランス艦船までが中国が埋め立てた人工島の至近海域で「航行の自由」を見せつけ、台湾では、米国が要人交流を解禁し、潜水艦建造技術を供与し、12日には在台協会(大使館に相当)事務所を拡張移転した。さらに3月下旬には中国寄り政権が野党と争っているモルディブに、中国の軍艦が接近したのをインド軍艦が近づいて警告を行ったために、中国軍艦は撤退している。6月22日、23日の中央外事工作会議で決議されたのは、アメリカには厳しく、周辺諸国と発展途上国には優しく、という外交方針だった。
3.ロシア( 4)以降は小泉筆)
1)3月の大統領選挙で、予想通りプーチンが再選を果たし、5月7日に就任式を行うとともに、18日には新たな内閣メンバーを公表した。就任と同時に発表した大統領令「人々のためのロシア」では、外交面の言及はほとんどなく、政策の重点は「国民生活の向上」に置かれた。内閣では留任、あるいは横滑りした者が多く、全体として地味で堅実な実務者タイプの者が多い。そしてメドベジェフが首相に留任したことは、今期で大統領職を退く(憲法は三選を禁じている)プーチンの後継としてのメドベジェフを印象付けることとなっている。
2)ロシア経済は構造的な停滞を指摘され、「改革」の必要性が以前から叫ばれているが、その陣営を代表してきたクドリン元副首相は今回、政府への返り咲きは果たしたものの、閣僚以下、会計検査院長のポストに止まった。彼は5月22日、プーチンと個別に会談、「手続き上の監査に加えて、各省庁、地方の支出が大統領の掲げる戦略的目的遂行に資しているかどうかを監査する。また汚職にも目を光らせていく」と述べている。しかし閣僚ですらないクドリンが、中国の王岐山なみの強い権限を獲得することはないだろう。
また、「改革」と言っても、ロシアでできることは限られている。企業の民営化による効率向上が一番の課題だろうが、民営企業を運営できる人材がロシアでは決定的に不足している。また、米国のイラン核合意離脱と対イラン制裁の復活で原油価格が急騰したことは、ロシアにおける改革機運をまた萎えさせてしまうだろう。
3)ロシア外交の最大の課題は、クリミア併合後の制裁で生じた、「西側からの孤立」状況を脱すること、具体的には制裁措置の緩和・撤廃を実現することである。制裁はロシア人のプライドを傷つけているだけでなく、プーチンを囲む有力実業家達の事業を阻害している。彼らは在米資産の凍結(あまり実行されているとは見えないが)、あるいは入国禁止の措置を食らって、在米資産の移動にも差し支えている。他方、制裁はロシアのマクロ経済にはさして被害を与えていない。西側での起債を禁じられたロシア企業は僅かで、ガスプロム等は欧州でユーロ債を発行しては直ちに完売しているし、ロシア政府も西側でユーロ建ての国債を発行している。これらは西側企業の社債より利回りが良く、かつ原油輸出国で通貨の安定が見込めるので、買い手には米国金融機関が多い。
4)この数年、ロシア軍は上げ潮であった。軍の諜報機関であるGRU(参謀本部偵察総局)はクリミア併合に最大の貢献をしたし、シリアでも2015年9月の軍事介入は西側の虚を突き、アサド政権護持に成功している。そのため国防費は2016年に約3兆9000億ルーブル(想定GDPに対して4.7%)と、絶対額でも対GDP比でも過去最高水準に達した。2017年、ロシア経済はマイナス成長を脱して約2%の成長を示したが、これには軍需生産が伸びたことが少なからぬ役割を果たしているとされる。
しかし2017年の国防費は約2兆8700億ルーブルと大幅に削減され、2018-2020年の連邦予算でも概ねこの水準を維持する意向をプーチン大統領自身が示している。同大統領は2016年の年次教書演説において、国防発注の減少に備えて民生品の生産を増加させるよう軍需産業に求めていることからして、2020年代半ばまでは国防費の抑制が続く可能性が高いと考えられよう。
5)最近では、ロシア軍の限界を指摘する記事が増えている。まず兵員が不足している。人口ピラミッドでちょうど凹んでいる世代が徴兵の対象年齢に達していることもあり、2017年度の徴兵数は春季と秋季で合計27万6000人と、2010年代で最少となった。2018年春季の徴兵目標人数は12万8千人で(年に2回徴兵)、2006年以来最小の人数である。また、これまで順調に増加してきた契約軍人(志願兵)の数は2017年度末の時点で38万4000人とされており、2016年度末の数字から変化していない。契約軍人は有給であることから、人口だけでなく国防予算の逼迫(上述)も影響しているものと見られる。ただし、2018年にはロシア軍の定員が100万人から約101万人へと微増していることから、経済情勢が一段落すれば契約軍人の増加を再開する意図自体は放棄されていないものと思われる。
装備面では2018年に入ってから「2027年までの国家装備プログラム(GPV-2027)」がスタートしたと見られるが、その予算規模や詳しい調達項目・調達数などは明らかにされていない。報道によると、GPV-2027では海軍向け予算が大幅に削られ、地上部隊重視になるとされており、一時期言われていた新型空母や原子力駆逐艦といった外洋艦隊の建設は先送りになる可能性が高い。地上部隊向けの新鋭戦闘車両や航空宇宙軍向けの第5世代戦闘機についても、予算面の制約を考慮すればまとまった数が揃うのは2020年代半ば頃となろう。
こうした中でロシアの軍需産業は効率化のための再編圧力と輸出ドライブとに晒されている。しかし、これまで最大の顧客であった中国とインドはそれぞれ国産能力を高めており、ロシア製兵器への依存度は以前ほど高くない。また、インドとの間では第5世代戦闘機の共同開発計画が二転三転するなど、共同開発パートナーとしての関係にもトラブルが生じている。一方、中露間では次世代超大型ヘリコプター、次世代大型旅客機、無人航空機などの共同開発が合意されており、供給国と需要国という関係性からパートナー国へという変化が部分的に生じている。これが戦闘機、戦闘艦、戦闘車両といったいわゆる正面装備にまで拡大するか否かが今後の焦点となろう。
6)最近目立つようになったロシアの傭兵企業は、シリアでは2月、Vagner社の傭兵が石油利権を狙って米特殊部隊の基地を夜襲、暗視装置を装備する米軍に多数が殺される壊滅的打撃を受けた。傭兵企業に対するロシア内部の対応は、分裂している。Vagner社のプリゴージン社長はプーチンとのコネを売り物にしているが、軍は傭兵企業を懐疑的に見て、これまで傭兵企業を合法化(刑法では禁止されている)しようとする立法の試みをつぶしてきた。しかし最近では諜報機関も入り乱れて、立法化への動きが進んでいる。
7)ロシアは、シリア紛争の「凍結」を考えているようだ。5月18日ソチを急遽訪れたアサド大統領に対してプーチンは、「シリア政府軍が非常によくやったので情勢は落ち着いた。外国軍は撤退するべき時だ」という趣旨を述べた。この「外国軍」の中には米国、トルコだけでなく、イランの革命防衛隊も入っていると目されたので、イランの外務省報道官は「イランの勢力はシリア政府との合意の上でシリアにいる。何者もイランのやることに介入は出来ない」と述べ、早速反発している。
8)この背景には、5月9日にイスラエル軍がシリア領内で実施した過去最大規模の空爆があると見られる。この空爆ではシリア南部に展開したイラン革命防衛隊やヒズボラの部隊および軍事拠点が標的になったとされており、事態がエスカレートすればイランとイスラエルの直接衝突がシリアで発生する恐れがあった。このような事態に至れば、ロシアがこれまで積み重ねてきた介入の努力が水泡に帰する恐れがある。このため、ロシアは仲介役となってイラン側をシリア南部から撤退させる一方、ロシア空軍機を飛行させてイスラエルによるさらなる空爆をけん制したと伝えられる。
9)ロシアとイランの関係はいつも良好なわけではない。近世では、ロシア帝国とペルシャはトルコと三つ巴で地域覇権を競ったし、パーレビ王朝イランと米国は正式に同盟関係を結んでいた。ホメイニ政権が成立した際にも、ソ連系のツデー党は粛清されているのである。今回もロシアは、シリアについてはイランの利益を無視してでも、事態の収拾を優先したいのであろう。
4.北朝鮮の非核化(近藤筆)
1)今後の事態を転がしていく主な要因は、核廃棄とその査察、平和条約締結と日米韓の北朝鮮との国交樹立、在韓米軍の扱い、北朝鮮への経済援助であろう。中国は、事態が米国と北朝鮮の直談判で進むのを嫌っているようで、南北+米中の4カ国協議を主張してくるだろう。
これからの推移において注目するべきは、韓国国内世論が在韓米軍撤退を求めるようにならないか、そして在韓米軍撤退が韓国の北朝鮮への接近、合一化をもたらすことにならないかということである。統一朝鮮はロシアをかなり上回るGDPと、もしかすると核兵器を所有する大国となるだろう。
もう一つは、米朝首脳会談をめぐってはロシアがほぼ完全に埒外に置かれ、金正恩はロシアを訪問しようとはしなかったことである。北朝鮮は以前一貫して中ソの対立を利用、双方から援助を絞りだしてきた過去を持つ。従って北朝鮮は今後、ロシアとの関係も適宜維持しつつ、中ロ両国をバックに日本に対しては強硬な要求を繰り出してくるだろう。
5.日本の動き
軍事面でのいくつかの話題を紹介するに止める。
1)朝鮮国連軍はアジア版NATOになるか
最近、朝鮮国連軍と日本の間に地位協定があることが、話題になって来た。朝鮮戦争の時、国連軍(米主導)に参加する国と日本政府が結んだもので、米国、カナダ、英国、フランス、豪州、NZ、フィリピン、タイ等11カ国の軍が日本の横須賀、佐世保、嘉手納等の基地を朝鮮有事には使えるものとするものである。最近、英国の艦艇、豪州、カナダの哨戒機が東シナ海で、北朝鮮船との制裁破りの取り引き「瀬取り」を監視する作戦を展開しているが、これら軍艦はこの地位協定を援用して日本の基地を使用している。面白いことだ。
なぜ面白いかと言うと、朝鮮戦争、しかも国連軍という限定はついているが、まるで東アジア版のNATO、あるいは日豪とNATOの連合版が成立しているからである。そして英国、仏がこれとは無関係に、アジアに相変わらず軍艦を送ってくることも面白い。フランスは太平洋に植民地を残しているし、英国は英連邦諸国を持っているので不思議でない。これは大きな戦力ではないが、それでも日本、韓国、豪州にとっては、政治的には使えるタマだろう。
2)垂直離着陸のF35Bで日本も空母保有?
最新護衛艦「いずも」、「かが」は垂直離着陸の戦闘機F35Bを搭載すれば航空母艦となり得る(一部改造が必要)。しかしヘリ空母としての現在の使い方と、本格的空母としての使用法はかなり異なる。前者は対潜作戦を想定しており、これまでの海上自衛隊の基本任務である米空母艦隊の護衛の範疇にある。本格的空母となると、日本独自の海上戦闘、あるいは対陸攻撃を想定し、空中戦、あるいは敵の陸上攻撃を行うものとなる。更にF35を搭載するとなると、航空自衛隊と海上自衛隊の間でこれまで養成してきたパイロットの取り合いが起きる。
そのためか、この件はまだ議論の段階に止まっているようだ。小野寺防衛相は3月2日の参院予算委員会で、「いずも」にF35Bの発着が可能かどうか調査している、導入を前提としているわけではなく、空母化に向けた具体的な検討をしているわけではない、と答えている。
3)イージス・アショアをめぐる議論
もう一つは「イージス・アショア」の問題がある。これは、日本の陸上に2カ所設けるだけで全土をカバーできるので、海上のイージス艦を別の目的、つまり対中海戦用に用いることができるという意味がある。しかし最近では、「イージス・アショア」が1基約1000億円と高価なために、これを所轄する陸上自衛隊の予算を不当に増やしてしまう可能性が指摘されている。国防予算の陸・海・空間での配分比率は、なかなか変えられないのである。
4)米国以外からの兵器購入
次期主力戦闘機、イージス・アショア等については、「米国が高価な兵器を日本に押し付け、自主開発を妨げている」という反発も見られる。これは、米国が日本との兵器共同生産においてさえ技術開示を控えるために、かつてのような技術の移転が起きにくくなり、日本企業側にとってのうまみが減っていることも背景にある。このためか最近は、英国、ノルウェー等米国以外からの先端兵器購入が増えている。
6.その他の話題( 4)及び5)は小泉筆)
1)トランプはレジーム・チェンジを放棄へ
「自由と民主主義を世界に広めること」は、これまで米国が掲げてきた旗である。オバマ時代等、海外での軍事行動を控える時はあっても、途上国、旧社会主義諸国の反政府勢力を陰に陽に支援、専制主義的政権を倒させてしまう「レジーム・チェンジ」の手法はほぼ一貫して用いられてきた。2003年グルジア(ジョージア)、2004年及び2014年ウクライナでのレジーム・チェンジ前後には、欧米系現地NGOが野党勢力を物心両面で援助していたことが目につく。
このレジーム・チェンジ支援にはいくつものウラがある。一つは、対外工作活動の一環としてのものがある。レーガン時代の1983年、CIAのCasey長官の肝入り、そして議会での超党派での支持でNational Endowment for Democracy(NED)なる財団が作られ、ここに国務省等を通じて年間約1億ドルの予算が流れる仕組みが作られた。このカネは、海外での「民主化促進運動」に携わっているNGOに助成金として配分されてきた。
これはCIAの裏工作を表に出したような面があり、これら団体は「広報」と称して、世論工作に都合のいい情報を流すとともに、反政府勢力を支援しているのである。更に、右NGOの中には、共和党傘下のInternational Republican Institute、あるいは民主党傘下のNational Democratic Instituteがあって、政治家への拠金の隠れ蓑となることが指摘されている。例えばマッケイン上院議員は上記International Republican Institute会長を長年にわたって務めているのだが、2008年彼が大統領選に出馬した時は、このInstituteを利用して政治資金を集めているとの批判を浴びている。
トランプは国防省予算の増額を推進しているが、昨年9月国連総会での演説等で、他国の主権を尊重してレジーム・チェンジはしない旨を明言している。それがなぜなのかは不明である。あるいは彼はCIAを何らかの理由で敵視・警戒しているのかもしれないし、民主化運動の名目で有力政治家が資金集めをするのを止めたいのかもしれない。
そのためか9月から始まる来年度予算についての大統領予算教書では、上記国務省への予算が記載されていない模様である。予算を作るのは議会なので、NEDへの予算支出が止まることはないだろうが、面白い動きではある。
2)イラン核合意からの米脱退⇒原油価格上昇はロシアを利する
ロシアは西側の制裁を受けているが、米国のイラン核合意脱退で油価が上がったことは、ロシアの財政事情を大いに緩和する。ロシアの連邦予算は、原油輸出ブランド「ウラル」が1バレルあたり40ドルで売れるという前提(ロシア側はこれを「保守的シナリオ」と呼んでいる)で組まれているが、現在の原油相場はこれを大幅に上回っており、ロシア政府は再び余剰の原油収入を積み立てることが可能となった。
また、OPECとの間では、増産の是非をめぐって立場を異にしていたが(ロシアは増産継続)、サウジ・アラビアが米国からの要請を受けて(イラン産原油が制裁の対象になるため)増産に転じたことで、ロシアとOPECはこれからも当面共同歩調を続けることとなった。
他方、天然ガスの輸出は空前の勢いにある。欧州は昨冬厳冬に見舞われてガス需要が急増、政治的にはロシアと対立する英国でさえ、需要の20%程度をロシアから輸入している。ロシア北方ヤマル半島でLNGプラントが稼働したことも、ロシアの対欧ガス輸出能力を大いに高めている。このLNGは米国ボストンにも供給されて話題となった。
3)シベリア石油をめぐる奇奇怪怪――日本の取り分はどうなる?
ロシアの国営石油会社(世界最大)ロスネフチは2016年12月、株の19、5%をスイスの石油取り引き企業Glencoreとカタール政府の外貨運用基金に売却していたが(実際の資金の殆どはロシア対外経済銀行が出したもよう)、うち14.16%を中国の新興石油企業CEFCが購入する話が進んでいた。しかしCEFCの社長、葉簡明が3月に逮捕されたことで、この話しは流れている。中国の石油業界はかつて中国公安(秘密警察)の縄張りにあった。現在はどうなっているか知らないが、葉簡明は誰かの虎の尾を踏んだのではないか?
それはどうでもいいのだが、ロスネフチの株は日本にも関心がある。ロスネフチがシベリアで産する原油は昨年まで日本にも輸出されており、サハリンからのものを合わせて日本の需要の9%程度を賄うに至っていたのだが、シベリアから中国に至るパイプラインが2本に増えた昨年末当たりを契機にそれは激減し、今やロシアからの原油輸入は日本の需要の5%弱程度に落ちてしまったからである。ロスネフチの株主となれば、日本への供給増をはかることができるだろう。シベリア原油はその油質の高さ、輸送期間の短さで日本側にとって貴重なのである。
4)イラクへの兵器輸出を強化するロシア
ロシアがイラクへの兵器輸出を増加させている。サダム・フセインの時代、ロシアはイラクと緊密な関係を持っており、イラク戦争後は2014年、ISISが急伸してバグダッドに迫った際に、旧式戦闘機等を緊急に供与。以後はSu-25地上攻撃機、MI-35M、MI-28N等ヘリコプター、対戦車ミサイル等を輸出している。
5)黒海でのロシア海軍優位・NATOの対応
NATOでは、黒海におけるロシア潜水艦が搭載する長距離巡航ミサイルの脅威が問題となっている。1月19日付Jamestown論評によれば、ロシア黒海艦隊はフリゲートを3隻、キロ級攻撃型潜水艦を6隻増強しており、これらが射程1500キロ以上の巡航ミサイルCalibrを搭載すると、欧州にまで脅威が及ぶ。特にルーマニアのMD基地は標的になる。ルーマニア、ブルガリア海軍は脆弱で、トルコのみ対潜水艦能力持っているが、地中海方面と力を二分せざるを得ない。米軍はP-8ポセイドン哨戒機を飛ばしているが、ロシアが黒海において展開しているA2/AD網(戦闘機、防空システム、地対艦ミサイル、潜水艦、機雷、電子妨害能力等から成る)に対して脆弱である。NATO側は目下、黒海、地中海での共同訓練を増やして、ロシア海軍を抑止している。これにはウクライナ、グルジアも加わっているが、両国の海軍は2008年のグルジア戦争および2014年のウクライナ危機でほぼ壊滅しており、実質的な能力は乏しい。
6)ロシア軍、シリアの基地を強化
昨年12月、ロシアはシリアでのTartus、Khmeimimをそれぞれ海軍基地、空軍基地として49年間無料で借用する合意を結んだ(12月26日付www.rt.com)。Tartusは拡張されて、艦船11隻が同時に利用できるようになる。プーチンは上記のように、シリアから外国軍が撤退することを呼びかけているが、ロシア軍はその埒外のようだ。また、ロシアはエジプトとの間でも空軍基地の租借交渉を行っているほか、リビアにおいても海軍の拠点獲得を目指していると伝えられ、かつてのソ連が有していた程度の地中海プレゼンスを復活させることを目指していると見られる。
7)ベトナム沖の資源開発で中ロの鞘当て
4月、ベトナム沖Lan Doでロシアの国営石油会社ロスネフチが天然ガスの採掘を開始した。これまでの探鉱の成果である。ここは中国も権利を主張している海域で、中国外務省は4月17日、「ロスネフチは中国の許可を取る必要がある。中国の主権を尊重しろ」との報道官発言を行った。この地区での開発には、インドも参加している。
ベトナムは中国に対するカウンター・バランスとしてロシアを利用してきた。ロシアにとってもベトナムは、中国に対する無言の抑えになる他、ASEANへの窓口になってくれる。ロシアとベトナムはFTAを結んでいるからで、ベトナムに輸出したロシア製品は無税でASEAN諸国に輸出できると、ロシアは考えている。またベトナムは、「ユーラシア経済連合とASEANを結びつける」という、プーチンの大ユーラシア構想の扇の要にもなっている。
更にベトナム中部のカムラン湾は南シナ海をにらむ戦略的要地だが、ここにはソ連時代、ソ連艦船が常時利用した港がある。カムラン湾には今でもロシア、米国、中国の艦船、そして海上自衛隊の艦船(「いずも」も寄港している)が相次いで寄港し、ベトナム外交の大きな資産となっている。
8)「ユーラシア」での覇権争い
日本、米国、豪州は「インド太平洋」なる概念を打ち出して、インドとの連携構築に余念がないが、インドは中国と張り合いつつも経済面では協力、二股をかけている。そしてモディ首相は5月、ソチにプーチンを訪問している。その際ラヴロフ外相は、「秋にはユーラシア経済連合とインドの間でFTA交渉を始める」と表明している。また5月22日付独立新聞によれば、今年は両国貿易は40%増加する見通しであるし、昨年はロシアのインドへの原油輸出は10倍になった由。ロシアからインドへはパイプラインはないので、イランからスワップで供給された可能性がある。
これらのため、欧州を除くユーラシア大陸を中ロが席巻するかのような印象が作られつつある。プーチンは既に「大ユーラシア構想」なる概念を提唱、ロシア肝いりのユーラシア経済連合と中国、ASEANとの連携強化を呼びかけている。そして6月9-10日青島での上海協力機構首脳会議にはインド、パキスタンが初めて正式に参加。「青島宣言」のうち、一帯一路の部分についてはこれを支持する加盟諸国名が列挙される中、インドのみが抜けている異常なものとなったが、これは紛争地域のカシミールで中国が建設案件を推進することへの牽制であって、インドと中国の間では国境紛争を棚上げする合意が4月末、モディの訪中で成立している。インドも一応「ユーラシア」概念に乗って、これを自分の地位を高める一つの手段としているのである。
9)カスピ海波高し
カスピ海の戦略的な意味が増大している。ロシアが配備した射程1500キロ強の巡航ミサイル「カリーブル」は陸上配備ができない(1987年米ソの中距離核戦力全廃条約は、陸上配備の中距離核ミサイルを禁じている)ので、艦船から発射するのだが、小艦艇からでも発射できるので、カスピ海のロシア海軍に好適の兵器である。既にシリアに向けては発射しているが、1500キロ強の射程距離を利用すればタジキスタン、アフガニスタン、イラン、中東等を射程に収める。これは大きな脅威となる(黒海のロシア海軍艦船からは欧州諸国を狙える。これについては後出)。
もう一つは、カスピ海を横断し、ロシア領に入らずに西欧に入る通商路を開発する動きが加速していることである。カザフスタンのアクタウ港が増強され、カシャガン産原油積み出しのためのKuryk港が整備されている。対岸のアゼルバイジャンのバクー港は増強され、さらにその南にAlyat港が開かれて、ジョージアを経由しての鉄道でトルコから西欧に至る輸送路が増強されようとしている。さらにカザフスタンは、カスピ海と黒海を結ぶ「ユーラシア運河」建設を提唱しており、費用も自ら支弁するとしている。これまでのボルガ・ドン運河は、黒海からアゾフ海に入り、ドン川、ボルガ川を経てカスピ海に入るのだが、ユーラシア運河はこれより1000キロ短いものとなる。またボルガ・ドン運河は13閘門を有するが、ユーラシア運河はこれよりも平準な地域を通過するので閘門は9しか要しない由。これらはいずれも、ロシアの鉄道使用を不要とするもので(ユーラシア運河はロシア領を通過するであろう)、政治的意味も持つ。
更に米国がアフガニスタンへの兵站物資を輸送するため、この輸送路を活用する構えを示し、カザフスタンとアクタウ、Kuryk港の利用で合意したことが、ロシアでの反発を呼んでいる。アフガニスタンへの兵站物資輸送では3のルートがある。一つはパキスタン経由、一つはカスピ海横断、一つはバルト海の港からロシアの鉄道でカザフスタン、ウズベキスタンを経由するものである。ロシアは、カザフスタンが米軍に協力すること自体が気に入らないし、ロシア経由のルートが完全に不要になるのも嫌なのであろう。
なお前向きのニュースとしては、トルクメニスタンがバクーとの間で建設を狙っていた天然ガス海底パイプラインの敷設が、政治的にはいよいよ可能となろうとしていることがある。これまでカスピ海底利用には沿岸国すべての了承を得ることを主張してきたロシアが、その主張を下ろしたからである。トルクメニスタンは天然ガス輸出をほとんど中国に向けているが、中国が開発費用を負担したため、ガス料金を未だほとんど払っていない。トルクメニスタンとしては一刻も早く、トルコ、西欧にガスを輸出したいところだが、今のように天然ガス価格が低迷している時に、カスピ海底パイプライン・プロジェクトが動き出すとも思えない。
10)中央アジア、独自色を強化
ユーラシアで、中央アジアが独自色を強めている。これは以前から日本が狙っていたところで、中央アジアがASEANのような緩いまとまりを持つことで、中国、ロシアに対する立場を強化しようというのである。
中央アジア5カ国は3月17日、カザフスタンの首都アスタナで非公式首脳会議を開催(永世中立を建前とするトルクメニスタンは国会議長)、特に合意をしたわけではないが、団結を印象付けた。2004年まで中央アジア5カ国協力会議が存在していたが、これを思わせる動きである。但し5カ国はロシアの反発を呼ぶのを懸念して、5カ国だけでの協力機構設立は目指さないと述べている。
それでも、中央アジア諸国とロシアの間の摩擦が表面化してきた。もっとも目立つのはカザフスタンで、3月15日ロシアのラヴロフ外相は、「カザフスタンが米国人に無査証待遇を与えることを事前に相談されていなかった」ことを問題視する発言を行ってカザフスタン側から反発を呼んでいる。4月15日には国連安保理でロシアが、米軍のシリア攻撃を非難する決議案を提出したのに対して、非常任理事国のカザフスタンは棄権している。カザフスタンはシリア紛争当事者に話し合いの場をこれまで提供して来たので、中立性を維持したかったのであろうが、ロシアの世論は反発した。それから間もなくして、上記のようにカザフスタンがカスピ海の港を米軍の兵站物資輸送用に提供する合意を行ったことで、ロシアのマスコミのカザフスタン非難は頂点に達した。
他方、ウズベキスタンのミルジヨエフ大統領は5月16日に米国を公式訪問。彼は就任後、ロシア、中国を既に訪問しているにもかかわらず、今回米国で軍事協力5カ年協定に署名して兵器供与の話し合いまでしたことはロシアの気に障ったことであろう。ミルジヨエフは帰国後わざわざプーチンに電話して訪米の成果を説明、ウズベキスタン訪問を要請している。
11)麻薬ルートが変われば政治が変わる
アフガニスタンは世界最大の麻薬産地で、その製品の多くは西欧に流れる。そのルートが問題で、途上には様々の利権が巣食い、地元政治家・機関も絡んで政治の動きの裏を形成する。これまではタジキスタンからキルギスを経由してロシア、更にコソヴォ、モンテネグロ等バルカンに流れて西欧というルートが主要なものと目されていたが、4月6日ロシアのRIA通信によれば、これに変化が生じていて、ロシア経由のものが減少、2015年頃からトルコと「東」(中国のことか?)を経由するものが増えた、これはこの頃からISISがアフガニスタンの麻薬ルートを押さえたことが原因である由。ISIS勢力がそこまでアフガニスタンで力を伸ばしているかは不明だが、麻薬のルートに変化が起きれば、タジキスタン、キルギス、そして中国の新疆地方では、政治の動きに微妙な変化が生じるだろう。
12)イスラエルはイラン核施設を攻撃するか
イラン核合意から米国が脱退したことで、イスラエルはイランの核施設を攻撃する青信号を得た状態になっている。しかしイランは目下核開発を停止しているので、イスラエルは攻撃の大義名分を欠く他、イスラエル空軍が攻撃をするにはサウジアラビアか、北方のシリア、トルコ、アゼルバイジャン等の上空を通過せざるを得ない。いずれもすんなりと通してくれる国ではない。アゼルバイジャンにはイスラエルはこの数年、無人機を輸出する等、関係は良いが、アゼルバイジャンはイランのロウハニ大統領が既に2度も来訪し、最近は国境をまたぐ鉄道を再開する等、関係が進んでいる。そしてイランの人口の25%はアゼルバイジャン系で、彼らはイラン北方に集住している。従ってアゼルバイジャンも、イスラエル軍機の上空通過をすんなりとは認めまい。
13)フランス、スウェーデンでの「徴兵制復活」
スウェーデンとフランスで徴兵制復活の動きがある。これまでの世界の潮流は徴兵制廃止で、米国でもドイツでもフランスでもスウェーデンでも徴兵制は停止・廃止されている。しかし契約制では、どの国も必要な兵員数を満たせないようだ。日本も同じ状況にあるが、徴兵制導入が問題を解決できるとは自衛隊の現場は思っていないようだ。最近の兵器の扱い等は複雑度を増し、2年程度の徴兵では使いものにならないからである。スウェーデンの「徴兵制」は徴兵年齢青年の4%程度、4000名程度を想定。フランスでは、マクロン大統領が大統領選での公約で徴兵制復活を謳ったのをフォローしているもので、具体像はまだ決まっていないようだ。今議論されているのは最低1ヶ月の基本教習程度のもので、軍にとっては却って負担となるので、軍は後ろ向きである。
14)米国第2艦隊蘇る
米国は5月、2011年解散していた第2艦隊を復活させる決定を行った。これは北大西洋から米国東岸、カリブ海までを担当する艦隊である。これは米国自身、そして米欧間の航路(英国ーアイスランドーグリーンランド経由航路。頭文字を取って"GIUK gap"と呼ばれる)の防衛強化を念頭に置いたものだろう。既にアイスランド、グリーンランドにある米軍基地(海軍航空兵力用)が再び立ち上がっている。これはクリミア併合でロシアの脅威が増したことへの対処であるが、中国がアイスランドの財政危機に付け込んでプレゼンスを増大、グリーンランドでも資源を狙ってか進出の動きを示していることも、NATOにとって問題視されるようになるだろう。
(以上)
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