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2012年2月18日

中国への旅行寸景 拾遺

いつもなら、どこかへ行けば長文の随筆を書いて、その中にいろいろな情景を挟んでおくのだが、11月の中国東北地方への旅行では様々な断片を書き散らすうちに、いくつかの「情景」を書き損じてしまった。いつか本にする時には一緒に入れたいので、ここに書き留めておく。

中国への出発

2011年11月初旬、成田で「南方航空」のエアバス321に乗り込む。東北へ行くのになぜ「南方」なのか、それにそんな航空会社は聞いたことがないと思って調べると、これは中国で最大の民間航空会社なのだそうだ。だが空港の蛇腹から見ると、操縦席の前の機体はペンキがはがれている。なんとなく、頼りない。
だが、インテリアは清潔で、手入れがいい。機内のアナウンスも洗練されている。もっとも基本的に中国と英語だけで、日本語は免税品販売の時録音で流されただけだ。そして飛行中の映画は英語と中国語字幕の「ハリー・ポッター」。きっと、日本人乗客は全員、中国語か英語に堪能だと思っているのだろう。

この飛行機は中国東北地方での霧のため、1時間遅れて成田に着いていたのだが、全く定時に動き出した。機内の座席は3分の2ほどうまっているだろうか、だが満員の感じがする。中国人の乗客も、年々あか抜けてくるけれど、成田空港では出発の1時間も前からゲートに並んでいた。あとで中国の鉄道駅を見て気が付いたのだが、中国の遠距離鉄道は列車到着の20分ほど前にならないと改札口を開けないので大変混雑する。だから乗客たちはずいぶん前から列を作って待っている。つまり、これと同じことを空港でやっていたのだった。

「南方航空」社の機内パンフレットを取り出す。路線図を見ると、この航空会社の本拠地がある広州のあたりは無数の路線が集中して真っ赤になっている。台北も「国内路線」の地図に表示されていて、中国本土と多数の路線で結ばれている。国際路線は中央アジアにも随分行っていて、タジキスタンのドシャンベ、ホジェント、トルクメニスタンのアシハバード、キルギスのビシケク、オシュ、カザフスタンのアルマトイ、そしてウズベキスタンのタシケントなどほぼ万遍なく行っている。

 長春に着く。旅券審査は速かった。このあたりは共産国家の厳しい官僚主義を立派に克服したと思う。ロシアは、昔より良くなったと言っても、旅券審査窓口では時間がかかるし、係官の態度も横柄なことが多いからだ。今の中国では、荷物もすぐ出てくる。だがエコノミー・クラスの乗客の荷物たちは、少し間を置き、「経済舱」という札に導かれ、あたかもオリンピックの入場行進のように連れ立って出てきたのには苦笑した。そこまで待遇の差を強調することはないだろう。

大連で

大連は中国の中ではさほど話題にならない都市だし、その経済規模も中ぐらいのものだろうが、それでも高層ビルが立ち並ぶ様は壮観だ。港の付近に行くと、発電所の大きな冷却塔、クレーン、そして高層ビルが人を圧倒する中に、IKEAの看板やモダンなガソリン・スタンドが混在している。これでは、中国が世界だ、中国は世界の中心だと思いこんで無理はない。

帰国

大連から成田まで帰りの南方航空の乗客は、殆ど中国人だった。成田に着くと、彼らは旅券審査で滞留してしまい、荷物受け取りの所までなかなかでてこない。ここではエコノミー・クラスが不当な差別を受けることもないので、悠々と荷物を受け取って外に出た。

 池袋行き成田エクスプレスで、本を読んだ。この無限の宇宙には、実はもう一つの宇宙、異次元の宇宙があるという話。さもありなんと思う。異次元―――
そして思う。そうだ、中国は異次元なのだ。自分は、もう一つの異次元の日本から帰還したようなもの。あたかも夢からさめた感じで、欧米から帰ってきた時の、ぜんぜん異なる文化圏に行ってきたという感じと違う。同質の文化圏でありながら、何か奇妙にワープしているような。中国は確かに親戚だ。だが気を付けて付き合うべき親戚なのだろう。

日本は、安心とルールの国だ。だからいいのだが、他面窮屈。そして政治は果てしない泥試合。池袋に着く。駅での人の密度は、中国の3分の2くらいだ。僕は、日本は人が多すぎると前から思っていたのだが、今回は中国と比べて思う。
「みんなどこへ行ってしまったのだろう? 日本はどうしたのだろう?」

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