2018年6月12日
製造業は最重要 でなくなるのか
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ロボットやAIの普及で、人間が失業する可能性、あるいは失業しても政府からカネをもらい、一種の消費機械として経済をまわしていく可能性は既に大いに議論されている。しかしロボットやAIで何でも安く、いくつも作れるということになると、「製造業は富の源。製造業の強さが国の力を規定する」という、19世紀の産業革命以来の通念が意味を失うのではないか? つまり生産機械さえ持っていれば、そこに製品の製造情報をインターネットで得て、何でも作れるようになる。最新の製造業がどの国でも簡単に成立するのだ。
そうなるとチープ・レーバーを求めて製品を組み立てる地をあさったり、その製造地と消費地の間で貿易赤字の問題が起きたりすることもなくなるだろう。地産地消が徹底、つまりモノの面では自給自足が高まる。その時世界を行き来するのは、モノの間に差をつけるブランドや意匠の情報で(つまりA国企業のブランド品の製造情報をB国の機械に送って生産するのである)、これは貿易外収支の不均衡をもたらすが、モノの貿易に比べて金額ははるかに小さなことになるだろう。世界貿易額は縮小し、海運も縮小する。
本当にそうなるのか? 天然資源は「地産地消」というわけにはいかない、という問題が残っている。
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