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世界はこう変わる

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2014年6月 6日

ウクライナは当面、ロシアと西側の陣取りゲーム

5月25日のウクライナ大統領選挙では、チョコレート製造を中心とする食品業財閥ポロシェンコが55%近い得票率で当選した。多数の候補者の間で票が割れて6月15日の決選投票にまでずれ込むだろうと思われていたので、地滑り的勝利と評される。彼を大統領にして事態の収拾をはかろうとする裏の動きも当然あっただろうが、世論の広い支持がなければここまで高率の得票を挙げるのは難しい。親ロシア派が暴力で抑えているドネツ、ルガンスクでは選挙委員会職員が怯えて出勤しないから投票所も開かれず、殆ど投票もできなかったのだが、約55%という数字はそのような細かい事象は押し流してしまうだろう。ポロシェンコは既に6月初めにはプーチン大統領との会談を提唱、ロシア側もこれを受ける姿勢を表明している。EUではカール・ビルト・スウェーデン外相が仲介の労を取る姿勢を示している。1709年、スウェーデンのカール12世は東ウクライナのポルタヴァでロシアのピョートル大帝と一大会戦、敗北して、ロシア帝国興隆への道を開いたのだが、現代のスウェーデン外相はその後始末というわけだ。

まあそれは冗談なのだが(ロシア人識者も同じような冗談を書いている。彼らは危機の時にもユーモアを忘れない)、ウクライナの情勢がすんなり平定するかどうか、難しいものがある。というのは、ロシアは国境にまでNATOが迫ってくること、そしてウクライナをEU企業に席巻されることを怖れているので、ウクライナを第2次大戦後のオーストリアのような中立国にしたい、それができないならウクライナを連邦制、その実国家連合として東ウクライナだけ中立地帯とする、またウクライナ南西部に接するモルドヴァ共和国内の「沿ドニエプル自治区」に集住するロシア人を守るために駐留するロシア軍への補給路、クリミアへの補給路を確保したい、そういった要求を掲げてくるのだろうが、今の状況では交渉の立場が強くない。

親ロシア勢力が踏ん張っているのはドネツとルガンスクだけで、ドネツでは親ロシア勢力に対する本格的鎮圧作戦が始まっているからだ。ロシア国内では、ロシアの本格的な関与を求める世論が強まるおそれがある。正規軍が侵入して国際的非難を招くよりも、ロシアから義勇兵が大挙して蝟集する態勢を取るだろう。そしてこの戦闘には既に、ロシアが密かに関与している。というのは、親ロシア勢力が作った「ドネツ人民共和国」の「国防相」になったStrelkovは、実名Igor Girkinで最近までモスクワ近郊に住んでいた、ロシア軍諜報機関GRU要員だと報道されているからだ。

他方、戦力をほとんど有していないと言われるウクライナ軍が、最近かなり本格的な作戦を展開できるようになった背景には、米国の支援がある可能性がある。ロシアのラヴロフ外相などは以前から、東ウクライナに米国の傭兵会社(米軍OB達が作った戦争請負企業は多数あり、頻繁に名称を変えている)が活動していると指摘している(米国政府は当然否定)。

つまりロシアは、今のままで西側と交渉すると、「クリミアは手に入れたが、ウクライナは失った」ということになりやすく、もう少し東ウクライナで地歩を築かないとウクライナ中立化という目的は達せないだろう、しかしロシアが東ウクライナでの地歩を拡張しようとすると内戦状態になり、それは米ロの代理戦争の様相を呈する可能性もある、ということになる。今の状況を見ていると、まさにそうなりつつあるようだ。

(以上はメルマガ「文明の万華鏡」第25号からの抜粋です。「文明の万華鏡」は「まぐまぐ」社サイトhttp://www.mag2.com/で購読予約いただけます)

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