界のメルトダウン その25 理念の時代から情念の時代へ キリスト教徒とイスラム教徒 積もる歴史的怨念
(13年前、「意味が解体する世界へ」という本を草思社から出版した。
米国のイラク攻撃が、「自由」とか「民主主義」というスローガンへの幻滅をかきたてると同時に、米欧諸国の足元でも移民により多民族国家化が進行し、近代の「自由民主主義」が危殆に瀕している様を随筆風に書いたものだ。僕が自分の書いた中でいちばん好きな本。
そして今、13年前に書いたこのことが、世界のメルトダウンを起こしている。
それについて共著本の出版を策していたのが頓挫したので、ここに自分の書いた分を発表していくことにする。これはその第25 回)
キリスト教徒とイスラム教徒―積もる歴史的怨念
ローマ帝国は周辺の「蛮族」と常に戦っていたが、帝国の崩壊後、イスラムを奉ずる北アフリカの蛮族は海賊となって地中海沿岸のキリスト教諸国を襲っては住民を拉致し、身代金を強請するようになった。イスラムを奉ずる中東のアラブ人、ペルシャ人たちは、東方貿易を独占し、アジア産品をキリスト教諸国に法外な値段で売りつけた。
このイスラムの利権を、キリスト教国は十字軍、そして次はヴァスコ・ダ・ガマ以来の大航海時代による自前の東方貿易ルートの確立(武力を用いたのである)によって奪い取るとともに、南米大陸から強奪した大量の金銀を跳躍台として産業革命を達成、それまでの農業、鉱業、手工業に依存していた世界経済の規模を一気に百倍以上のものとした。この間イスラム地域は産業革命を達成することができず、イスラムは既得権益層を頑迷な神秘主義で守るものと化して、かつての先進地域オリエントを何百年にもわたる停滞に投げ込んだ。
このことは、キリスト教諸国の繁栄に対する羨望、怨念となり、現在も絶えないキリスト教諸国に対するイスラム・テロの大きな背景となっている。ここでは、怨念というものが、国際政治上の大きな要因になっているのである。
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