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2021年4月15日

ロシア、9月の総選挙モード

(これは3月23日に発行したメルマガ「文明の万華鏡」第107号の一部です。この後、ウクライナとの国境にロシア軍が集結していることが危機感を醸し出していますが、これはウクライナのゼレンスキー大統領がバイデン新政権による支援に期待して、NATO加盟促進とか、クリミヤ、東ウクライナ奪還などの動きを強めているだけでなく、メデヴェドチュクという極め付きの親ロ政治家への圧力を強めていることに対する示威行動でしょう)

 これまで郊外の公邸に引きこもり、もっぱらズームの類で会議や会合をこなしてきたプーチン大統領が、やっとナマで出てくる機会が多くなった。なのに、ロシア自慢のコロナ・ワクチン「スプートニクV」を受けようとしない。多分、もっと高齢の国民に順番を譲っているのだろう。23日には接種するというニュースがあったが、24日正午になっても、それを確認するニュースは発見できない。(注:その後彼はワクチンを受け、既に2回の接種を完了しました)

彼は、2月末にも恒例の年次教書を議会で読み上げる予定だったが、これが延びて、そのままになっている。おそらく教書では、9月の総選挙を意識して、コロナとの戦いにおける勝利を印象づけ、社会政策の強化を打ち出そうとしたのだろうが、コロナはまだ落ち着いてはいないし、昨年末から始まった食品等、生活必需品のインフレ増進で、今教書を出して胸を張れるような状況ではないからだろう。
(その後、彼はワクチンを受けたこともあり、生身で4月21日、議会で年次教書を発表する構え。もしかすると、「プーチン後」へのヒントが示されるかもしれないとも言われています)

9月には議会総選挙、地方での首長・議会選挙が予定される。既に投票態度を決めた者の中では、与党「ロシアの統一」の支持率が2017年の58%に比べて42%に落ちている。これでも、「ロシアの統一」は議会で多数を維持できるだろうが、当局は反政府の動きにめっきり神経質になっている。ナヴァリヌイの監獄行きの他にも、15日にはモスクワ郊外のホテルで集会(無許可)をやっていた野党系の地方議員たち約150名が、踏み込んだ官憲によって一網打尽に拘束されている。

まあ今は西欧でも、警官が(コロナで)市民の集まりを取り締まったりするのだが、上記のこわもてのやり方は、青年世代の多くには「?」という受け取り方をされていることだろう。ロシアは平均寿命が短い国なので、逆に言うと人口構成が若い。2019年現在で、人口の43%が34歳以下。うち3000万が20歳以上の世代Y(ミレンニアル)で1500万が世代Z(10代)、1800万が10歳以下となっている。このうち10代後半以上では、当局の吹聴する愛国主義にも、西側思潮に染まった識者が吹聴するリベラリズムにも関心を示さず、「普通の自由な生活」を望む者が増えている。世代間の感覚のずれは日本同様、深刻な問題だ。

3月2日はゴルバチョフ元大統領の90歳の誕生日で、プーチン大統領とミシュースチン首相がそれぞれ祝電を送った。ゴルバチョフと言えば、西側ではソ連を自由化した英雄となっているが、ロシアではソ連崩壊を導いた悪者ということになっている。80歳の誕生日の時は覚えていないが、今回大統領と首相の双方が祝電を送ったのは、総選挙を控えての一つのイメージ戦術であったかもしれない。特にミシュースチン首相は、ゴルバチョフを改革者、世界を変えた政治家と持ち上げている。ゴルバチョフの改革者イメージに寄り添うことで、青年世代の票獲得を狙ったのか?

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