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世界はこう変わる

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2016年9月30日

世界のメルトダウンその12 近代の諸概念の意味の喪失6 「常識」の溶融・文明の溶融

(13年前、「意味が解体する世界へ」という本を草思社から出版した。
米国のイラク攻撃が、「自由」とか「民主主義」というスローガンへの幻滅をかきたてると同時に、米欧諸国の足元でも移民により多民族国家化が進行し、近代の「自由民主主義」が危殆に瀕している様を随筆風に書いたものだ。僕が自分の書いた中でいちばん好きな本。
そして今、13年前に書いたこのことが、世界のメルトダウンを起こしている。
それについて共著本の出版を策していたのが頓挫したので、ここに自分の書いた分を発表していくことにする。これはその第12 回)

「常識」の溶融・文明の溶融

 目を社会や文明全体に広げると、ここでも大きな変化が起きていることに気がつく。今の時代は歴史の曲がり角とでも言えるような、それほど大きな変化のただ中にある。まず日本について言うと、これまで「大企業に就職」することが一生の安定を保証するものと思われてきたのが、世界での競争が激化するにつれて、終身雇用を全員に保証することは不可能になっている。そして外国人が社で隣の机に座る例も増え、企業によっては取締役会も英語で行っている。

そして世界に目を移すと、そこでのパラダイムの変化は目をみはるばかりである。例えば、一時日本の企業に押されていた米国の製造業も、アップルのように世界全体を自社のサプライ・チェーンと想定し、世界中から最良の部品を集め、中国の労働力を使って組み立てさせるアウト・ソーシングの手法で、再び日本の先を行くようになっている。人工頭脳やロボットの開発は小回りの利くベンチャー企業の方が向いているが、米国はベンチャーの立ち上げに最良の法律・金融・知的環境を持っているため、技術大国を自称する日本を引き離しつつある。

 そして世界では、家族という社会の基本単位も溶融を始めた。日本でも離婚はごく普通のこととなり、同性愛や婚前同棲も珍しいことではない。米国の一部の州では、同性間の結婚も合法化、制度化されており、最近では中国在勤の米外交官(男性)が中国人男性と結婚した例が報道されている 。

 そしてそれよりも究極の変革は、「人類」が近い将来、その姿かたち、生き方を根本的に変えてしまうかもしれないことにある。遺伝子操作が進めば、「改造人間」が多数登場する。器官の一部を機械に替えたサイボーグも登場する。そしてロボットは人間から職場を奪うだろう。その代わり、ロボットは人間の奴隷としていくらでも欲しいものを生産してくれるかもしれない。反対に、そのロボットがある日自分で際限なく学習を初めて、人類の知をしのぐようになれば、ある日突然人間を支配しようとし始めるかもしれない。世界最高の知のゲームとされる囲碁においてさえ、人工頭脳が世界チャンピオンを破っている。

現代は、人間、価値観、国際法、あらゆるものが溶融し、あらたな型を求めて漂流し始めた時代なのである。
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